動画ストリーミングサービスのコンテンツは、地上波とは違い、制作における自由度が高いことも特徴だ。「DEVILMAN crybaby 」にも過激なシーンが多数あったが、それはネットフリックスでやる意義につながっていたのだろうか。
写真提供:ネットフリックス
「たしかに暴力的であったり、性的であったり、という側面もありました。ただ、決して過激さが目的ではありません。これはどの作品を作る上でも言えることですが、まずは伝えたいメッセージがある。それを伝えるために一歩踏み込んだ表現が必要なら、それは入れましょう、というスタンスでネットフリックスはコンテンツをつくっています」
ネットフリックスには「Context, not Control」という社是があるという。これは何かをコントロールしようとするのではなく、そこに必要な文脈があれば採用する考え方。
「『DEVILMAN crybaby 』にはバイオレンスな表現が頻繁にありますが、それを通して、人間性がもっている“業”のようなものをいかに伝えられるか。視聴者にどれだけ共感してもらえるか、といった点で必要な表現だったと思っています」
写真提供:ネットフリックス
攻めた表現を目的とするのではなく、文脈上必要な手段であると感じたら採用する、と語る沖浦。
「ネットフリックスオリジナルアニメとして『バキ』も配信していますが、これは原作にかなり忠実に再現することが前提にあります。グロテスクや暴力的なシーンがありますが、それはインターネット配信だからこそ再現できる。ネット配信の強みをうまく利用できていると思います」
日本のOLを描いたはずが世界中で受けた「アグレッシブ烈子」
ほかにも、最近では「アグレッシブ烈子」が世界的な人気を獲得している。
「あれは面白い現象でした。日本のOLが愚痴をデスメタルに乗せて発散する作品なんのですが、海外の人が「私も同じ!」とSNSに投稿することで一気に広がっていったんです。お酌をするときはビールのラベルを上にしなければいけないといった、いわゆる日本的な作法に対する愚痴などをネタにしながらも海外にもウケたのは監督の絶妙な手腕によるものだと思います」
写真提供:ネットフリックス
全世界190カ国以上で配信され、「世界中に愛されるアニメーション制作」をミッションに掲げるチームで働く沖浦。
「海外にウケる」ための企画はどのように考えているのだろうか。そもそも、全世界をターゲットにすることで視点がボヤけてしまうもどかしさはないのか。
「日本のアニメは日本のクリエイターが主導でつくっています。たとえば僕たちが『海外の人はこういうのが好きそうだな』と思ってつくってしまうと、不自然な感じになってしまう。視聴者に迎合するのではなく、まずは自分たちが面白いと信じられるものをつくる。それが結果として海外でも面白いと思われるのが本来の順番だと思っています」