「ピーナツバターとジャム」「チキンとワッフル」のような比較的なじみのあるものから、「ピクルスとアイスクリーム」や、中国で最近登場した「スパイシーチキン味のオレオ」のようなとっぴな組み合わせまで、まるで奇抜さを競い合うような新商品が次々と生まれている。
中には、聞こえも味も比較的ましな組み合わせがあるのは確かだが、神経科学と食べ物の関係を過去11年間研究してきた米ハルト・インターナショナル・ビジネススクールのマット・ジョンソン教授によると、さまざまな食べ物の組み合わせに対する人間の執着は味に対するものだけではない。「舌を通して感じる味は氷山の一角。食べ物の組み合わせへの執着の根底にあるのは、期待と予想の力だ」
ジョンソンは、同校のプリンス・グーマン(神経科学マーケティング学)と共に、書籍『Allure: The Neuroscience of Consumerism(誘惑 消費主義の神経科学)』を執筆。その中で2人は、神経科学が消費者体験に与える影響を分析した。
2人によると、食事に関する期待は「脳にとって本質的に報酬を与える」ものだという。例えば、ソムリエがコート・デュ・ローヌのワインをラム料理と合わると、「期待の精神的機構が始動し、どちらかを味わうことなく、既に喜びを体験する」とのことだ。
組み合わせの中には他よりも予測しやすいものがあるため、期待と予想により喜びの程度が決まることもある。例えば、赤ワインと赤肉の組み合わせは、ヌテラ(ヘーゼルナッツチョコレートのスプレッド)を使ったラザニアよりも予測しやすい。
「ワインのペアリングと違い、人はヌテラとラザニアの組み合わせを経験したことがない。期待から得られる喜びは、既にワインの組み合わせよりも高い」とジョンソンは説明する。
そのため、特定の食べ物の組み合わせが、既に存在する予想を超えれば超えるほど、脳では多くのドーパミンが放出される。既に存在しない食べ物の組み合わせを使って予想を超えれば、喜びを増幅できる。「最も強力な“口の絶頂体験”は、人が最も期待・予想しないような快楽によって得られる」とグーマンは述べている。