運転する時に一番ハートを刺激するものといえば、エンジンの加速感、振動、そして音。しかも、このエンジンは、とても優秀だ。3.0Lの低中速トルクはかなり太いけれど、7000回転のレッドラインまで力強く伸びる。8速A/Tのパドルは、パッと気持ちよくシフトが決まる。
つまり、どの回転数でも、どのギアでも、M240iは速い。どのくらい速いか? 0-100km/hの加速は4.8秒だとBMWは言うが、僕のストップウォッチでそれより若干速く記録した。どうですか、皆さん? こんな抜群の直6が次期スープラに搭載されると思うと、嬉しくなりませんか。
英国のグッドウッドで僕がこの耳で聞いた新スープラのエキゾーストノートも特別にチューニングされていたので、ブオ〜と低音が効いていてスポーティ感覚満点だった。
M240iをコンフォート・モードかスポーツ・モードにしていると、横滑り防止がちゃんと作動して、暴れるジャーマンシェパードを上手く躾るかのように、後輪駆動がスリップしそうになると、見事に抑えてくれる。
でも、ドライバーにとってもっとも気持ちがいいのは、スポーツ・プラス・モードだ。スロットルのレスポンスが良くなり、ステアリングがよりクイックに変わり、そしてアダプティブ・ダンパーも、より固めにセットアップされているから、このモードでこそ一体感を感じる快活な走りを楽しめる。
ただ、ドライバーの操作量に合わせてステアリングのギア比を連続的に変化させるM240iのバリアブル・スポーツ・ステアリングは、新スープラにはつかないと思う。トヨタはおそらくM240iと異なるステアリング感覚を目指すだろうから、それよりシンプルな機構を使用すると思われる。
このM240iは、引き締まって、グリップのいい、ダイレクトなステアリングで、 フィードバックもしっかり感じられる。M240iとほぼ同様のプラットフォーム、サスペンションを採用する新スープラは、ハンドリングも相当期待できるはず。
M240iのブレーキは、充分以上の制動力がある。一方、グッドウッドではカモフラージュされていたスープラのブレーキはむしろ、M550iとほぼ同じものだった。ということは、新スープラの制動力は、コンセプトよりもグレードアップされていることが期待できる。
M240iに乗っていた時に、実はもう一つ思いついた。価格だ。おそらくスープラはM240iの650万円とほぼ同価格になると思う。今までに登場した日・欧の合作スポーツカーの中で新スープラが最も強烈なものになるはずなので、今から期待しよう。
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