浅田慎二が日本代表を務めるセールスフォース・ベンチャーズは、15年9月に同社へ出資し、支援をしている。
庵原:2015年6月にお会いした際に、浅田さんからは、僕らのサービスの方向性を決定づける言葉をもらいました。僕らは当初、個人を含めた中小企業向けにサービス展開していました。ただ、浅田さんから「これだけ高度なことができるなら、中堅・大企業向けにしたほうがいい」とアドバイスをいただき、そこから戦略を大きく転換しました。
浅田:当時、スマートフォンが急速に普及していく中で、アプリの需要は高まっていました。ただ、開発会社に依頼すると高くて手が届かない企業が多い。そのボトルネックを解決する、ヤプリのサービスにものすごく時代にあっていると感じました。なかでも、急速に伸びていくEC事業者向けにつくれたら、絶対に伸びるなと。
庵原:SlackやDropboxのように安く広く提供するサービスが目立っていたこともあり、当時は僕らも中小企業向けサービスでしたが、一方で中堅・大企業向けにも売れ始めており、どちらにフォーカスすべきか迷っていた時期でした。結果的に、戦略を高く少数へと変更し、スタートは好調。それが自信につながり、成長速度も一気に上がりました。
浅田:投資する際に最初に見るのはマーケット。次に大事なのはチーム。起業家は、100人に会ったら99人に否定される仕事で、「心が折れる旅」。だから、カリスマ創業者よりも「三本の矢」。ヤプリのような庵原さんがビジネス、佐野さんがプログラマー、黒田さんはデザイン、そして3人を接着するような性格。この凸凹だけど補完的なチームに魅力を感じました。そして、セールスフォースとしても、我々のメソッドを情報提供したり、製品連携、顧客開拓などを積極的に行うことで、バリューアップできる可能性が高いという点が投資した理由です。我々の製品はグローバルで利用されており、ヤプリにはない顧客との接点もあるので、欧米市場への支援もできると思っています。
庵原:セールスフォースのマーケティングやセールス手法など、SaaSビジネスにおける世界一の経営ノウハウを知ることができるので、僕らも見よう見まねですぐに取り入れています。僕らのミッションは、アプリ開発のハードルを劇的に下げ、誰もがアプリをつくれるようにして、世の中をもっと便利にすることです。そのベンチマークとして、20年の東京五輪までにプラットフォーム上で1,000社開発、1億ダウンロードを掲げています。現在、アプリの活用用途が広がっています。だからこそ、僕らの「業界を選ばない製品の面白さ」を追求すれば、さらにチャンスは広がると思っています。将来的には、IPO(新規株式公開)の資金で世界展開して10億ダウンロードまでという目標を立てています。
浅田:国内外を見据えたマーケットの伸びしろも大きい。そしてグローバルスタートアップのメソッドをスポンジのように吸収して学びながら経営しているからこそ、世界で活躍できる。そう信じています。
あさだ・しんじ◎セールスフォース・ベンチャーズ日本代表。慶應義塾大学経済学部卒、マサチューセッツ工科大学経営大学院MBA修了。伊藤忠商事、伊藤忠テクノソリューションズ、伊藤忠テクノロジーベンチャーズを経て、2015年3月より現職。主な他投資先は、ビズリーチ、freee、Sansan、トレタ、スタディスト、Andpadなど。
いはら・やすぶみ◎ヤプリ代表取締役。出版社、ヤフー、シティバンクのマーケティングマネージャーを経て、2013年4月、ファストメディア(現・ヤプリ)を3名で創業。さの・まさふみ◎ヤプリ取締役。ヤフーを経て現在に至る。未踏ユース2007年度下期クリエータ。
くろだ・ますみ◎ライブドア、ヤフーを経て現在に至る。