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田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

元日本代表監督の(左)岡田武史、(右)西野朗

2018年、サッカー・ワールドカップ、ロシア大会。この大会で日本代表チームを率いた西野朗監督は、1次リーグ第3戦、ポーランドとの試合において、冷静な計算のもと、リードされている状況で、最後の10分間、敢えて時間稼ぎのためのパス回しを選手に指示し、2位を競うセネガルにフェアプレー・ポイントで上回り、リーグ突破、ベスト16入りを実現した。

もとより、この采配については、海外メディアからは辛辣な批判が投げかけられ、国内の多くのサッカーファンの間でも、賛否の議論が渦巻いたが、いずれ、その批判も非難も覚悟のうえで勝負に徹した西野監督の姿は、文字通り「智将」と呼ぶにふさわしいものであった。

しかし、その智将の采配も、決勝トーナメントの初戦、ベルギーとの戦いにおいては、2点を先行しながらも、一気に追いつかれ、さらに後半のアディショナル・タイムに、不運とも呼ぶべき決勝ゴールを許してしまい、目と鼻の先にあったベスト8を逃す結果となった。

試合終了後、インタビュアーから敗因を問われ、西野監督は、冷静に、しかし、悔しさを滲ませながら、「何かが足りなかった……。何が足りなかったのでしょうかね……」と答えた。

このシーンを見ながら、筆者は、8年前のワールドカップ、南アフリカ大会でチームを率いた、岡田武史監督の言葉を思い出した。

この大会においても、日本代表チームは、見事に1次リーグを突破し、ベスト8を賭けたパラグアイ戦では、死闘の末、延長戦でも勝敗がつかず、最後のPK戦にもつれ込んだ。

しかし、このときもまた、日本側のキッカー駒野友一がゴールを外すという不運な結末に終わり、目前にあったベスト8を逃すこととなった。

後日、あるインタビューで敗因を聞かれた岡田監督は、試合を振り返り、こう答えた。

「私の勝負に対する執念が足りなかった……」

いずれも「不運」と呼ぶべき勝負の結末。その結末に対して語った、この二人のリーダーの二つの言葉。「何が足りなかったのでしょうかね……」という言葉と、「私の勝負に対する執念が足りなかった……」という言葉は、我々に、経営者やリーダーが持つべき究極の力について、考えさせる。

それは、「運気を引き寄せる力」と呼ばれるもの。

もとより、この「運気」とは、現代の最先端科学をもってしても、その存在は証明されていない。しかし、昔から、経営者やリーダーを始め、市井の人々も、誰もが、この「運気」というものの存在を信じてきた。

では、もし、そうしたものが存在するならば、この「運気」を引き寄せる力は、どのようにして身につくものか。

実は、そのことを考えさせられる、岡田武史監督のエピソードがある。

以前、岡田監督がJリーグの監督として戦った、ある試合において、誰の目にも明らかな審判の誤審によって、敗北を喫した。

試合後、記者からのインタビューで、その誤審について聞かれたとき、岡田監督は、感情的になることなく、淡々と、しかし、覚悟を定めた表情で、こう答えた。

「審判も人間であるかぎり、間違いはあります。それも含めて、我々は、勝たなければ駄目なのです」

この岡田監督の言葉を聞くとき、我々は、プロフェッショナルの世界で語られる、一つの言葉を思い起こす。

「運も実力のうち」

そして、その勝負強さと強運で、数々の戦績を残してきた岡田監督の姿を見るとき、一つの真実に気がつく。この言葉を覚悟する人物に、運気は巡ってくる。

「運気を引き寄せる力」とは、究極、その覚悟であろう。

田坂広志の「深き思索、静かな気づき」
過去記事はこちら>>

文=田坂広志

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