奥山由之を魅了する、写真が持つ「見せすぎない色気」とは #30UNDER30

写真家 奥山由之

写真家 奥山由之

奥山由之。20歳にして、自身初となる写真集『Girl』で、写真界の登竜門『写真新世紀』の優秀賞を受賞。いまの日本のクリエイティブシーンを牽引している、27歳の若き写真家・映像作家だ。
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デビュー以来、数々の写真集や写真展で作品を発表し続け、2016年には講談社出版文化賞を受賞。また、広告や雑誌、CDジャケットなどにおける写真作品の他、TVCMの監督業や、サカナクション・never young beachといったアーティストのMVなど、数々の映像作品も手掛けており、彼の作品は私達の日常に散りばめられている。最近では、約300人に及ぶ高校生のダンスを写し出したポカリスエットの広告写真で話題をさらったことは記憶に新しい。

取材当日。目の前に現れたのは、その小柄な体のどこに収まっているのか、と目を見張るほどのオーラを持ち合わせた、一人の好青年だった。彼は静かに、時に感情をあらわにしながら、ひとつひとつ丁寧に、慎重に言葉を紡いでくれた。

Forbes JAPANでは、30歳未満の次世代を担うイノベーターを選出する企画「30 UNDER 30」を8月より実施している。今回、「The Arts」部門で選出された奥山に、その半生と作品づくりに対する思いを聞いた。
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「個人プレイの磨き上げ」をしたサッカー少年時代

──奥山さんの、幼少期のお話を聞かせてください。

幼稚園から、ずっとサッカーをしていました。サッカー選手に憧れて、毎日近所のお寺で、一人、ボールを蹴っていました。

──スポーツ少年だったんですね。

サッカーがすごく好きでした。一応クラブチームに所属していたのですが、友達がいなくて、とにかくいつも一人だった記憶があります。

──サッカーはチームプレーが重要ですが、そのあたりは大丈夫だったのでしょうか?

チームプレーは……そんなに好きじゃなかったと思います。笑

人って、自分を取り巻く環境の中での「立ち位置」みたいなものを、言葉や音や匂いなどではない「第六感」によって、常に肌で感じている生き物だと思うんです。僕は、誰かに自分自身を見られて感情などを察知されることが好きじゃなくて。すごく気になってしまうんです。

常に一人で完結したいし、周囲がどう判断しても僕は僕でいたい。だからサッカーをやっていた時も、あまりチームメイトと話し合ったりはせずに、一人で練習を繰り返していました。

自分で反省を持ち帰り、一人で練習をして、更新していく。「個人プレイの磨き上げ」はこのサッカー少年時代に養われた気がします。
 
はじめて自分の作品が「見られた」経験

──サッカー少年だったとお伺いしましたが、中学生の頃にアニメーション制作も始められたんですよね。

はい。サッカーは高校までずっとやっていたのですが、中学生の頃に、「クレイ・アニメーション」という種類のアニメーション制作をはじめました。

粘土で猫のキャラクターを作って、それをちょっとずつ動かしては写真を撮影し、それら何万枚もの写真を繋げてアニメーションにする、というストップモーションの映像作品で。

──どうして作ろうと思ったんですか?

当時、アードマン・アニメーションズという、ロンドンの大きなアニメーション制作スタジオが作った『チキンラン』という映画を観たんです。

その時に、アナログ──立体物である粘土のキャラクターを、少しずつ動かして、繋げて映像にして見せるという手法にとても惹かれました。アナログの立体物とデジタル技術が混ざり合っている不思議な質感が、当時の自分にはとても新鮮で。柔らかくもあり硬いと言うのか、温もりも切れ味もあって、存在としての佇まいがすごく好きだなと思って、僕も作ってみようと。
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文=明石悠佳 写真=小田駿一

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