プライベートエクイティファンド(PEファンド)と呼ばれるものだ。PEファンドは、30年ほどの歴史しかなく、金融界では新しい部類に入るとはいえ、傾いた会社の株を買い、その資金で会社を再生させるなどして、日本でもどんどん勢力を伸ばしている。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、最近になって大手のPEファンドがこぞって(株式投資でなく)直接融資に乗り出している、と報じている。
具体的には、PEファンドを中心とするノンバンク融資は、2012年に約30兆円の残高だったものが、この5年で2倍になった。新規融資額も、2016年に約3兆円だったものが、翌年の2017年には6兆円弱に跳ね上がり、2018年もそれを上回るペースだという。
そもそも、銀行は融資をし、利息をもらって利益を上げ、ちゃんと融資金を回収して成長していく。しかしPEファンドは、主に未上場の会社を中心に株を買って、その会社の資金繰りを支え、その会社が上場したところで株を売却して大儲けをする。もちろん、予定通りに会社が上場できず、見限って損を抱えながら売却することもあるし、会社がつぶれてすべて無に帰すこともいくらでもある。
6兆円も貸し込む規模の大きさ
一般に、会社が生まれ、大きく成長するまでには、「ステージ」に応じていくつかの資金調達の山がある。どんなに儲かっていても、この山を超えられなければ身売りしたり、どこかの傘下に入ったり、まれには黒字倒産ということさえある。これまで銀行が銀行たりえてきたのは、そんな会社を、法人融資という形で支援してきたからである。
しかし、口でどう言い繕おうが、銀行は、起業ステージにある会社への融資にはそもそも向かない。なので、そういう場合、たいていは信用保証協会(公益法人)の保証をつけることで対応している。そして、起業を果たした会社が上場してしまうと、株式市場から大きく資金調達できることになるので、今度は銀行へのニーズは減退する。
なので、個人預金を集め、そこに大きく利ザヤを載せて法人融資で稼ぐという戦前からの銀行のビジネスモデルは、「中小企業がそれなりの実績を数期にわたってつくってから上場するまでの間」というステージで最大限に発揮される。
ところが、このところ、銀行の本来業務であるこの分野に入り込んでいるのがPEファンドなのだ。PEファンド最大手のKKR社は直接融資専門の部署をつくったし、ブラックストーン社やカーライルグループは直接融資用に数千億円の資金調達に入っている。