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お笑いの企業として名が通っている吉本興業だが、実は昨年1月、SDGsの勉強会を開催していた。普段はライブ会場となっている新宿のルミネtheよしもとに国連の4名を招き、大阪のよしもと漫才劇場とも中継をつなぎながら、合計約1000人の社員や所属芸人・タレントに向けて行われた勉強会。

「現場に不足しているのは笑いでした」

難民の現場で15年間活動してきた経験を持つ国連広報センター所長の根本かおるが、勉強会でそう話したという。難民キャンプでは、娯楽がほとんどない生活を送っている人々がたくさんいる。もともと関西出身でお笑い好きだという根本が、笑いのない現場を見てきたからこそ、「笑いが人を逆境から救う、笑いが人を支える」と訴えたのだった。

また、根本はお笑いの持つ「伝える力」にも期待を寄せて、会場でこう言った。「私たち専門家がどんなに話してもなかなか伝わらないことを、芸人さんはわかりやすく面白く伝えることができると思うんです」

笑いにきたつもりが……

「吉本興業は多くの人々と直接接することができるイベントを行なってきました。全国に12の劇場も抱えていて、人を集められる芸人たちもいる。見ている人を明るくさせられる笑いの力を持っている会社だと思っています」

後に吉本興業のSDGsを推進する部署で本部長を担うことになる羽根田みやびは、勉強会での話を聞いて、吉本興業ができることの可能性をそう感じたという。

「ほかの社員たちと一緒に、自分たちの仕事とSDGsがどのようにつながっていけるのかを考えてみました。そしたら、案外吉本興業だからこそできることがあるのではないかと思って」

こうして羽根田を中心に、SDGsへの取り組みが始まった。

最初の取り組みは2017年4月に沖縄で開催された、「島ぜんぶでおーきな祭」でのSDGsスタンプラリー。4日間で30万人以上が来場する毎年恒例のイベントで、吉本興業初のSDGsに関する催しを行ったのだ。

SDGsの17の目標をなるべく簡単な言葉にして、遊びながら学べるイベントを作りたい……その想い通り、多くの子供たちがSDGsスタンプラリーの台紙を持ち、両親の手を引っ張って会場を巡り、スタンプを集める様子が見受けられた。

「17個全部のスタンプラリー集めるのって結構大変なんですよ。それなのに、用意した5000枚の台紙全部がなくなって。最終的に完成させて持ってきてくれた人が4000人を超えました」と、この大盛況にはイベントを企画した羽根田らも驚きを隠せなかった。

「笑いに来た人が、そのつもりはなかったのに気づいたらSDGsの学びができているような、そんな取り組みを今後もっと行っていきたい」と、羽根田は話した。

この成功をバネに、夏には北海道で開催された「みんわらウィーク」の中でSDGs-1 グランプリを開催した。SDGsの17の目標から3つを選んで即興でネタに取り組み披露するイベントである。横澤夏子やおばたのお兄さん、ミキ、パンサーなどの芸人たちが登場した。

会場を埋め尽くすたくさんのお客さんたちの前で、芸人たちは試行錯誤の連続だった。持ちネタにどうSDGsを盛り込むかに苦戦したのだ。しかし、おばたのお兄さんは、「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」の3つの目標を選んで、おなじみの「小栗旬」ネタを披露した。

意外だったのは、観客たちの反応だった。客席から、笑いよりも先に盛大な拍手が沸き起こったのだ。

羽根田は、「芸人さんが必死に3つの目標を取り入れようとするその無理やり感に、上手にできなくてもお客さんは笑ってくれるんです。逆にきれいに取り込めたとき、笑いよりも先に拍手がわいたのには、驚いたし嬉しかったですね」と振り返り、「SDGsの取り組みを通じて、芸人たちの活躍の場が広がったら良いなと思います」と今後の活動に期待を寄せた。

文=工藤真由

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