NIOは今年5月下旬、従業員と投資家向けに新モデル「ES8」の納車を開始した。今後は販売台数が徐々に増加し、テスラの「モデルS」や「モデルX」に匹敵する数になっていくだろう。ES8の販売価格は、関税引き上げを理由に値上げしたモデルXの半額以下だ。また、NIOのEVは上海で生産していることから、地方部の市場への納車も容易だ。
中国のBEV(ハイブリッド車を除く)の販売台数は、7月も大幅に増加。4万7538台となった。1~7月では30万台を超えている。中国の業界団体によれば、ES8の7月の国内販売台数は、1331台だという。筆者の推計では、テスラの納車台数を上回る数となる(中国でのテスラの月当たりの納車台数は、公表されていない)。
テスラの昨年の中国国内での販売台数は、1万4833台だった。また、ブルームバーグによれば、同社は今年に入り、毎月800~1000台程度を販売しているとみられる。これらの数字から見て、ES8の販売台数は7月、テスラの2モデルの合計を上回ったと考えられる。
環境はNIOに有利
中国国内でのNIOのエコシステムの拡大が続けば、両社の差はさらに広がっていくだろう。NIOは国内主要都市の大半に、顧客向けの「NIOハウス」を開設している。これは、アップルストアとスターバックス、大学にある学生向け施設の中間に当たるようなものだ。NIO は今年第3四半期中に、さらに7店舗をオープンする予定だ。
NIOはまた、環境意識の高い中国の消費者層をターゲットに、ブランド育成のための努力を慎重に進めてきた。そして、その成果は出始めている。こうしたNIOの“急発進”は、(両社の株主である)中国のネットサービス大手テンセントが今後、株式の非公開化を提案したテスラへの出資に応じる可能性を低下させるだろうか? ──あくまで推測ではあるが、筆者はそうなると考えている。
ES8の華々しいビューは投資家たちに、自動車業界が真にグローバル化されたものであることを改めて思い出させたはずだ。中国では、BEVは単に消費者の関心を集めるだけのものではなくなってきている。そして、各社の資本は、中国市場でのシェア獲得のために使われている。
経済成長が20年にわたって続く同国に関する各社の戦略は、変わることはないだろう。世界的な主要自動車メーカーはテスラを除き全て、欧米の景気が回復し始めた2009年以降、十分な資本を確保している。