「インポッシブル・バーガー」は、肉を使ったバーガーの味や食感を大豆で再現したことで知られる。だが、環境保護団体の地球の友(Friends of the Earth)とETCグループは昨年8月、酵母を使って遺伝子操作した大豆レグヘモグロビンの安全性に疑問を呈するとともに、同社は安全であることを示す十分な証拠をFDAに提出するまで、販売を中止すべきだと批判する声明を発表していた。
インポッシブル・フーズはこの声明を受けて昨年10月、1066ページに及ぶ報告書をFDAに提出。安全性に関する見直しを求めていた。レグヘモグロビンについて同社は2014年、「GRAS(Generally Recognized as Safe、一般に安全と認められる食品)」の承認を受け、それをFDAに報告している。米国内では物質を新たに食品に添加して使用する場合、GRASと認められたことを報告すれば、販売にあたってFDAの承認を受ける必要はないとされている。
そのほか同社は2016年、ラットに「非現実的な」量の大豆レグヘモグロビンを与える試験を実施。その結果、摂取による副作用は確認されなかったと報告している。
強みの「肉汁」で事業拡大へ
インポッシブル・フーズと競合他社との差別化を実現しているのは、主要な成分であるこの大豆レグヘモグロビンだ。その点で、今回のFDAの承認は同社にとって重要なものだ。
同社は競合する各社とは異なり、大豆レグヘモグロビンによって本物の肉のバーガーが持つ鉄分の風味や血がしたたる状態などを再現することに成功。酵母によって実現されるこの奇妙なほど本物に近い肉の味で、ベジタリアンも肉が好きな人たちも同様に魅了してきた。
事業規模の拡大を狙うインポッシブル・フーズは、消費者の間における認知度の向上を目指し、高級レストランからチェーン展開しているレストランまで多数の企業と提携している。現在までに、ニシ(モモフク)やファットバーガー、ウマミバーガーのほか、ファストフード・チェーンのホワイトキャッスルなど合わせて約1300店舗と契約。ホワイトキャッスルでは「インポッシブル・スライダー」を1.99ドル(約220円)で販売している。
今後のインポッシブル・フーズにとって重要なことは、まずは規制基準の変更への注意を怠らないことだ。そして、戦略的な事業展開と健全な成長を持続することができれば、別の動物の肉の代替となる製品の生産を開始することになるだろう。
同社は 7月24日、フェイスブックに「…向こう数年間のうちに、植物由来のその他の肉や乳製品が発売されることになるだろう。インポッシブル・バーガーは、手始めにすぎない」と投稿している。