「無」になる時間を持つことが発想力の源泉

温泉を軸としたコンテンツを提供し、成長を続ける宿泊予約サービスの「ゆこゆこ」。社長の池照直樹氏に趣味のウインドサーフィンや料理の魅力と効能を聞いた。


現在、温泉旅館・ホテルの宿泊予約サービスを提供する「ゆこゆこ」の社長を務めています。

20代のころは「社長や起業」というものに対し、正直強い想いはありませんでした。最初の就職先は大手電機メーカーで、レンズのエンジニアに。その後、複数の大手外資系企業に籍を移し、生産管理部門やソフトウエアコンサルタント等、幅広い領域の業務を経験しました。

経営に興味を持ち、自費でマネジメントスクールに通って起業したのは35歳。結果的にその事業は売却したのですが、その後も自分の能力を生かし、かつ伸ばせるポジションに出会う機会に恵まれて、現職に至っています。キャリアを変え、自分の能力を伸ばし続けるということは、さまざまな働き方や考え方を学べるよい機会かと思います。

趣味は一貫して海遊びで、ウインドサーフィン歴はもう15年に。東京在住でしたが、息子の高校進学を機に思い切って鎌倉に越しました。週末は、風が吹いていればウインドサーフィン、波があって風がないときはパドルサーフィン、波も風もなければサップを楽しんでいます。

海遊びのいいところは、人間関係が自然とダイバーシティになるところ。下は小学生から上は80歳まで、年齢や仕事やポジションを超えて集まり、仕事では得ることのできない新鮮で刺激的な経験ができます。

先日は「LINEで800人中500人はブロックしている」という女子大生から話を聞き、スマホネイティブの若い世代にとっては「友だちになるハードルは低く、少しでも問題あればブロックをかければいい」という使い方があるんだなと学びました(笑)。

例えば30年ほど前まではセグメンテーション、つまり「どういう単位でお客様を分けるか?」という考えが主流でしたが、いまは一人ひとりがデバイスを持つ時代であり、1対1の関係を構築せねばならない。まさにいま必須とされる「One to Oneマーケティング」が、この海遊びの場にあると感じるのです。



料理も趣味です。うどんはかれこれ40年打ち続けていますし(笑)、パンもケーキもつくるし、ピザも焼きます。得意料理は18歳からつくっているボンゴレビアンコと、シアトルで覚えたクラムチャウダー。外食でおいしいものに出合ったときは材料や手順を想像し、家で再現するのがパターンですね。

料理のよさは、やはり人が喜んでくれるところ。それと、海遊びとも共通しますが、料理なら料理以外、海なら波と風以外、何も考えなくてよいところです。社長業というのは放っておくと24時間ずっと仕事のことだけ考えてしまう。でも、どこかで断ち切らなければ思考力が下がるし、新しい知識も入ってこない。

クリエイティブなアイデアというのは、ゼロから生むというよりは新しい組み合わせを考えることで、その組み合わせのためには頭を空っぽにする時間が必要です。ゆこゆこもお客様に対する感動やサプライズの提供が求められており、そのために仕事以外にどのように充実した時間を過ごすかを意識的に考えて行動しています。


いけてる・なおき◎ 1968年、群馬県生まれ。92年、上智大学理工学部卒業。日本コカ・コーラ、日本オラクル、ミスミを経て、2006年に起業。さらに米国マイクロソフトを経て、2014年よりエノテカの執行役員に。17年6月より現職。

構成=堀 香織 写真=yOU(河崎夕子)

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