「億り人」と呼ばれる仮想通貨長者の誕生や、取引所のトラブルにより、仮想通貨への注目は日増しに高まっている。
だが仮想通貨や、それを使った取引の信頼性を担保するブロックチェーンの「本来の目的や期待できる用途にまで理解が及んでいる人は多くない」と指摘するのが、研究開発組織「DG Lab」でブロックチェーンCTO(最高技術責任者)を務める渡邉太郎だ。
取引で間に立っている銀行やサービス提供者などの“第三者”を排除していく「中抜きの技術」なので、お金に限らず、商流などネットワーク全般に効果的だと、渡邉は話す。
「分散台帳なのでデータが安全という点ばかり注目されていますが、人を介さずに数学的な根拠だけで確実にカネやモノが届くのが最大の特徴です」
なかでもDG Labが注目しているのが「ビットコイン」だ。仮想通貨の祖とも言えるビットコインは、乱立する仮想通貨にあって色褪せてしまったと感じる人もいるかもしれない。しかも、以前からスケーラビリティ(拡張性)や手数料の高さ、トランザクション(取引)速度の問題が指摘されてきた。それでも渡邉は、「現段階で唯一信頼できる仮想通貨だ」と語る。
実際、ビットコインにはスケーリングやデータ容量に関する新技術が登場している。トランザクションの速度を速める「ライトニングネットワーク」や、取引所を介さずにやり取りできる「クロスチェーン・アトミックスワップ」など。特に後者は、仮想通貨取引の「トラストポイント(セキュリティの穴)」になっている取引所などの仲介者なしに直接やり取りを可能にするなど、仮想通貨本来のポテンシャルを引き出すことが可能だ。
他にも同社が提携するブロックストリーム社はトランザクションを暗号化する技術を開発したという。ビットコインを商用化する際の課題の一つが、プライバシーの問題である。消費者がビットコインでモノを購入すれば、その性質上、店やカード会社のほか、店の競合などにもトランザクションが共有されてしまう。これでは消費者も企業も使いにくい。そこで、特定のトランザクションを当事者以外には見えないように暗号化する技術が有効なのだ。
技術的な壁はまだあるものの、DG Labの大熊将人COO(最高執行責任者)は、ビットコインが「最も課題を解決する可能性が高い」と話す。そして、ビジネスの面でも優位だという。