テルアビブに本拠を置くTokaは、1250万ドル(約14億円)を調達したことも併せて発表した。同社の共同創業者は元イスラエル首相のエフード・バラック(Ehud Barak)で、イスラエル軍やセキュリティ業界のオールスターチームが経営をリードしている。
世界のIoTデバイスの数は今年中に350億台に達する見込みで、Tokaは諜報機関や軍用のビジネスチャンスを見出している。Tokaの社長を務めるのは、イスラエル国防軍のサイバーセキュリティ部隊で責任者を務めたヤロン・ローゼン(Yaron Rosen)だ。ローゼンによると、テロリストが人質を取って建物に立てこもった場合、IoTデバイスをハッキングして建物内の映像や音声を取得することが可能だという。
「サイバーキャパシティの構築は、我々が生み出した新しい分野だ」とローゼンは話す。彼はバラックとアロン・カンター(Alon Kantor)、クフィル・ウォルドマン(Kfir Waldman)と共にTokaを設立した。カンターはサイバーセキュリティ大手「Check Point」 の元バイスプレジデントで、ウォルドマンはセキュリティ企業「Kayhut」とモバイル企業「Go Arc」の元CEOだ。
プロ向けハッキングツールが増加傾向にあることに対しては、懸念も出ている。例えば、Tokaは発見した端末の脆弱性をメーカーに伝えないため、その端末はハッカーからの攻撃に対して無防備な状態が続くことになる。
人権団体らは批判
Tokaが属する「合法的傍受(lawful intercept)」業界は、人権団体から批判されることが多い。メキシコでは、ジャーナリストや弁護士、活動家などのスマートフォンがイスラエル企業「NSOグループ」が開発したスパイウェアによってハッキング攻撃を受け、大きなスキャンダルとなった。
NSOグループはツールが乱用されることについて懸念を表明しただけで、同社の製品が攻撃に使われたことを肯定も否定もしていない。トロント大学「Citizen Lab」のJohn Scott-Railtonによると、これまで監視業界はスパイツールの管理について責任を問われることはなかったが、人権侵害を行っている国家の手に渡ると非常に危険だと話す。
「私が投資家だったら、これらの企業が抱えるリスクについて慎重に精査するだろう。自社が開発したツールをしっかり管理できている企業はこれまで見たことがなく、全てのケースでツールが乱用されていた。企業が収益を優先させると、乱用を容認することになる。グローバルな顧客にハッキング技術を提供している企業の全てにおいてツールの悪用が起きている」とScott-Railtonは話す。