「ビリビリ動画は大学時代から使っている。今でも自分にとって最高の娯楽の一つだ」とLiは話す。運営元のBilibiliは米ナスダックに上場しており、月間ユーザー数は7750万人に達している。
同社CEOのChen Rui は最近のインタビューで、「今後はゲームなどの有料会員サービスを追加して売上を増やし、黒字化を達成したい」と述べた。ビリビリ動画の今年第1四半期の売上高は1億3800万ドル(約153億円)と前年から倍増し、損失は920万ドルに縮小した。
40歳のChenは連続起業家で、自身もアニメの熱烈なファンだ。ビリビリ動画はアニメ配信サイトの中でゆるぎない地位を築き、アリババやテンセントなどの大手と対抗できるまでになった。アナリストらはビリビリ動画が今後、中国のミレニアル世代の支持をさらに集め、黒字化を果たせるかどうかに注目している。
「ビリビリ動画は若いファンのコミュニティのようなものだ。この分野でこれだけの規模のサイトは他に存在せず、ユーザーのエンゲージメントは非常に高い」とビリビリ動画に出資する「IDG Capital」のTong Chenは話す。
ユーザーのエンゲージメントを高めるビリビリ動画の取り組みの一つが、「オンラインテスト」の実施だ。ユーザーはビリビリ動画の歴史や日本の漫画家に関する質問に答え、合格するとより多くのコンテンツを視聴することができる。他にも、ユーザーは「弾幕」と呼ばれるリアルタイムで画面上を流れるコメントを打ち込み、ユーザー同士で会話をすることができる。
2009年に誕生した動画分野の老舗
コンサルタント会社「Analysys International 」によると、4月のビリビリ動画ユーザーの1日当たりの平均滞在時間は78分だった。また、若いユーザーが多く、24歳以下のユーザー比率が55%を超える。
これに対し、アリババ傘下の「Youku Tudou(优酷土豆)」やテンセントが運営する「Tencent Video」、バイドゥ傘下の「iQiyi(愛奇芸)」の24歳以下の比率は18〜19%だ。
ビリビリ動画は、2009年に28歳のXu Yiによって設立された。Xuは後に経営をChenに任せたがプレジデントとして会社に残り、同社の「コミュニティカルチャー」の発展に努めているという。
「Chenのような年齢でビリビリが提供する若者カルチャーを理解し、同社のかじ取りができる人材は珍しい」とIDGのTongは話す。
それでも、ビリビリ動画の現状はChenの目指すゴールとは程遠い。同社の趣意書には、「動画やライブ放送、モバイルゲームなどを提供する総合娯楽サービス企業に成長した」と記載されているが、ゲーム以外のコンテンツから収益を上げることはできていない。
ビリビリの主な収益源は日本からライセンスを取得した「Fate/Grand Order」と「Azur Lane」などのモバイルゲームで、売上高の80%を占める。「主力事業の動画ストリーミングが収益を牽引できていないことは大きなリスクだ」とAnalysys Internationalのアナリスト、Ma Shicongは指摘する。