Makuakeを訪ねてから7カ月程度で商品を世に出すスピード感を実現した西橋氏は、「転職した気分で臨みました」とプロジェクトを振り返る。
既存事業が決して順調ではないなかの挑戦だったが、上司と一緒に社長へTEKION LABのプレゼンを決行すると、「赤字はダメです。でもトライはしてみたらいい」とお墨付きをもらえたという。
しかし、晴れて専任となるも責任は重くのしかかり、失敗できないというプレッシャーとも戦うことになる。
「新規事業をしていると、なぜか『遊んでいそう』という目で見られがちです。専任だからこそ、そう思われたくありませんでした」
新規事業に挑むも、形にならないケースを沢山見てきた。だからこそ商品化し、事例をひとつ作りたい。その信念でひたすら邁進した。
テキオンラボ 代表・西橋雅子氏
工夫した点は「販路」と「完璧を求めない」ということ。本来なら量販店に持ち込むところ、シャープとしては初となるクラウドファンディングによりお金を集め、商品化したのもそのうちの一つ。
「既存の商品であれば完璧なものを目指すことになりますが、シーズ起点ということもあって、どうアプローチすれば『価値』となるのか? を問うものにしようとチャレンジしました」と西橋氏。専任ではないエンジニアも面白がって参加してくれるなど協力者も現れた。
見方を変えてみるということ
テキオンラボが発足されたことによって変化が現れた。これまでやりとりのなかった大学や企業の研究部門等、幅広い業界・業種からの問い合わせが増えたのだ。社内からもアイデアが出るようになった。
現在は、社内での部署を越えた展開を検討すると同時に、潜熱蓄熱技術のような優れた技術を社外へ紹介し、コラボレーションをするといった可能性も探っているという。
GINZA SIX「蔦屋書店」での陳列のもよう(筆者撮影)
「新規事業のアイデアをどう考えたらいいかわからない」「既存サービスの延長のようなものしか出てこない」という場合、ゼロベースで考えるのではなく、組み合わせ、もしくは西橋氏のようにスライドして捉えるのもひとつの手だ。先入観を取り払えば、見慣れたものにも違った活用方法を見出せるかもしれない。
「0→1」であった「冬単衣販売」から1年を経て、現在は「事業」として「1→10」「10→100」の展開を考えているという西橋氏。インタビュー中、「私でも(社内ベンチャーが)できたので、皆もできるはず」と幾度となく発していたが、適温で幸せを届けるという思いが誰よりも熱かったからこそ成し遂げたことに他ならない。
世界を目指す「社内発イノベーション」事例
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