掛け声の主は、インドの多角的企業「リライアンス・インダストリーズ」を率いる会長、ムケシュ・アンバニ(60)。彼が同社の「家族デー」で社員にそう問い掛けると、約5万人が大声で返す。
「なれる! そうなってみせる!」
アンバニの野心は夢物語ではない。実際、リライアンス・グループは傘下に世界有数のエネルギー会社やインド最大の小売店を抱え、売り上げは509億ドル(約5.7兆円)に達する。
そして今、最も勢いがあるのが傘下の通信会社「Jio(ジオ)」だ。同社の4G/LTE高速データ通信サービスは低価格がウケて、2016年に導入後、すでに1億6000万人以上のユーザーが加入している。
ジオの通信網はインドの国土の95%に及び、利用料は格安。料金を据え置く同社の方針に対しては経営の観点から疑問の声も上がるが、アンバニはジオを通じて情報格差、ひいては貧困や教育問題を解決し、インドを変えたいと意気込む。
「これは、インドが世界と一緒に走っている競争なのです」
ムケシュ・アンバニ◎石油やガスなどのエネルギー企業のほか、小売りや通信関連企業を傘下に抱える多角的企業「リライアンス・インダストリーズ」の会長。父が創業した会社を引き継ぎ、世界で106番目の規模に育て上げた。弟のアニルと経営を巡って衝突し、2005年には分社化。ムケシュは石油やガス、アニルは金融とコアビジネスに関しては住み分けてきた。