ビジネス

2018.07.03

中国テック企業がIPO急ぐ理由、シャオミ・美団・アントの事情

シャオミCEO レイ・ジュン(Photo by Lintao Zhang/Getty Images)


シャオミの共同創業者兼CEOのレイ・ジュン(雷軍)は、低価格の端末を普及させて広告やゲームで儲けるインターネットサービス企業になることを目指している。現状は端末の販売が主な収益源となっているが、インターネットサービスは端末販売よりもはるかに利益が大きい。

これに対し、中国証券監督管理委員会はシャオミの売上高の70%がスマートフォン事業から生み出されているとして、同社が自らをインターネット企業として位置付けることに疑問を呈している。シャオミは、香港でのIPOに加えて中国本土でも中国預託証券(CDR)を通して上場する予定だったが、同社はこの計画を無期限で延期すると発表した。

中国の株式市場では、IPO銘柄のPER(株価収益率)を23倍以下にするという暗黙のルールがあり、シャオミのような急成長中のテック企業にとっては魅力が乏しいのが実情だ。同社が当初目指していた時価総額は1000億ドルだが、2017年の利益をベースにしたPERは54倍となる。世界で最も利益を稼いでいるスマートフォンメーカーであるアップルのPERは15倍、中国最大のインターネット企業であるテンセントでも34倍だ。

投資家は「乗り遅れまい」との心理

「上場市場が香港だろうが中国本土だろうが、市場の安定を保証するためには高すぎるバリュエーションに対して一定のコントロールが必要だ。IPOを目指す中国のテック企業は、自社が目標とするバリュエーションと適正水準とのバランスを取ることが大切だ」と上海本拠の投資会社「Gobi Partners」でパートナーを務めるKen Xuは話す。

美団点評もシャオミと同様の問題に直面している。北京大学のGillis教授によると、同社が目標とする600億ドルの時価総額は理解に苦しむという。美団は昨年、株式報酬費用や優先株式の評価替えなど一過性の損失を計上し、29億ドルの赤字に陥った。アリババやCtripなどのライバルからシェアを奪うため、同社は積極的にマーケティング費用を支出していることも大きな負担となっている。

Xuによると、それでも美団の株式には大きな需要が見込まれるという。シャオミも美団も中国では認知度が高く、それぞれの分野のマーケットリーダーだ。両社は、将来的に「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」を脅かす存在になると見られている。

「両社のバリュエーションは高騰しており、ファンダメンタルを見る限り目標時価総額は理に適っていない。しかし、多くの人は彼らが次世代のテック業界を担う企業に成長すると見ており、投資タイミングに乗り遅れることを恐れているのだ」とXuは話す。

編集=上田裕資

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