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2018.06.28

異業種からの転身で気づいた 「Jクラブ経営」の危うさ (前編)

日本代表チームの活躍によってを盛り上がりをみせる、2018年FIFAワールドカップロシア大会。連日の激戦をテレビ観戦するため、寝不足の人も多いだろう。そんな表舞台が盛り上がる一方で、Jリーグクラブの現場から悲鳴が上がっているのをご存知だろうか。人材不足、低賃金、長時間労働…。確かなやりがいはありつつも、厳しい労働環境に嘆くクラブスタッフは少なくない。

昨今、そのようなJクラブの経営状況を打破しようと、外部出身者を招く動きが活発になっている。Jリーグ5代目チェアマンの村井満がリクルート出身であることが、1つの象徴だ。今回話を聞いた2人も、IT業界という異業種出身の視点から、地方サッカークラブの活性化に取り組んでいる。

その2人とは、スナップマート創業者であり、現在は栃木SCマーケティング戦略部長を務める"えとみほ"こと江藤美帆。そして、2つのIT企業で上場にかかわり、2017年からSC鳥取・社長室事業戦略特命部長の高島祐亮。

IT業界の最前線で活躍していた2人が、なぜサッカー界に飛び込んだのか。そして異業種出身の視点からJクラブをどう変えていくのか。お話を伺った。

「お役に立てるかもしれない」

──おふたりがJクラブへ転職したきっかけを教えてください。

江藤:私は2018年5月から栃木SCにマーケティング戦略部長に就任したので、まだ入社2ヶ月ほどの新入社員です(笑)。今年に入ってからJクラブへのキャリアチェンジを決めました。

きっかけは、年明けにたまたま、テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」に栃木SCの橋本社長が出ていたのを見たことです。元々はいちサポーターとしてJリーグを観戦していたのですが、それから徐々にJクラブの運営に興味がでてきて。

2月には別のサッカークラブの執行役員の選考を受けて、最後の数名まで残りました。そこで情報収集をするうちに、Jリーグの問題点、どこを目指しているかを知って。そして、「お役に立てるかもしれない」という手応えを掴めたんです。

高島:僕がJクラブを選んだ理由の1つにも、「お役に立てるかもしれない』という感覚がありました。ガイナーレ鳥取に入社する前に塚野社長と話をしたとき、ガイナーレ鳥取には、さらなる収益源が必要だと気づいたんです。そして、それにはIT業界の経験がまさに活かせると思った。

うちには母体となる親会社が存在せず、経営状態は不安定になりがち。限られたリソースの中でチームを勝利に導き、サポーターに喜びを提供できるかを考えた時、新たな収益源をつくることが急務だと感じました。

通常クラブの収益源は、スポンサー収入、グッズ収入、チケット収入の3つ。この他に新たな収益源を増やして収益増を狙うには、経営の意思決定のスピードや、状況にあわせた柔軟な判断力が必要です。僕はこれまでIT企業で事業開発・事業提携・M&Aに携わり、企業の立て直しや成長に関わってきました。その経験は、ガイナーレ鳥取のお役に立てるかもしれないなと。

江藤:栃木SCは、「うちはデジタルが全般的に弱い」と社長が認識しているので、広告代理店だった経験と知見がお役に立てるかなと。また高島さんと似ていますが、Jクラブ全てに言えることとして、新しい収益源の獲得が必要だと感じました。これまで会社や新規事業を立ち上げた経験から、その課題にも挑戦してみたいと思っています。
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文=田中一成 写真=小田駿一

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