ビジネス

2018.06.29 10:00

自分の子どもが「明るい希望を持てる日本」に|新 和博x鹿野佑介

アイマーキュリーキャピタル代表取締役社長の新和博(左)とウェルモ代表取締役CEOの鹿野佑介(右)

アイマーキュリーキャピタル代表取締役社長の新和博(左)とウェルモ代表取締役CEOの鹿野佑介(右)

鹿野佑介が2013年4月に設立したウェルモは、介護の地域資源プラットフォーム「ミルモ」シリーズを運営。中核・政令指定都市・特別区の福祉専門職、一般利用者に向けて、高齢者支援を中心とした、介護保険内外のサービスや介護事業所の“見える化”を行う。
-->
advertisement

また、介護福祉士や看護師、理学療法士などの専門知識や知見を取り入れたAI(人工知能)により、ケアマネジャーが利用者に適切なケアプラン作成を補助するCPAも開発。さらに、児童発達支援事業所「UNICO」も運営している。

新和博が社長を務めるアイ・マーキュリーキャピタルは、ミクシィのCVC。17年1月にウェルモに投資を行い、支援をしている。


:鹿野さんと最初にお会いしたのは2016年11月。最初の印象は「介護や障害の領域に対して、勝手に強い使命感を持っている人」。“俺が立ち上がらなければダメだ!”と、事業や業界の課題について、とにかく早口で熱く、よくしゃべる。その時の話だけでは消化不良で、鹿野さんが東京に来るタイミングで、1回当たり2時間を超えるミーティングを3回繰り返しました。
advertisement

鹿野:介護や障害は介護保険法、障害者総合支援法も含め、予備知識が必要な事業領域。さらに、介護事業所は都内で1万7000事業者を超え、コンビニの3倍以上なのですが、そうした実情も知られていない。その中で、自分たちの「ITによる情報提供で介護する側も介護される側も快適な環境を選べるようにする」というビジネスを理解してもらうためには、早口で情報量を多く伝えないといけないですから(笑)。

:なぜ鹿野さんに投資をしたか。それは使命感に加え、「正しい人としっかりコミュニケーションしている」こと。介護業界を変えるべく、現場の専門職、職能団体、行政、政治家、有識者の方をはじめ、ライトパーソンたちとつながっており、さらに味方に巻き込んでいる。

そして、「現場感をすごく持っている」こと。運営している障害児施設に一緒に行った時に「鹿野さん、鹿野さん」と職員の方々や子どもたちから慕われていた。自分自身が現場に入り込んで、きちんと目を向けているのがいいなと。とにかく鹿野さんを“助けたい”という人が多いんです。

鹿野:介護・福祉の領域は、人の生死に関わっている人がすごく多い。だから、感情や気持ち、つながりといった人間味をすごく大切にする業界で、論理的な説明やデータだけでは人は動かない。コンサル出身で、介護現場での経験もある自分のキャリアを生かして“両方行き来できるスキル”があるのはプラスだとは思います。

ただ、一番大切にしているのは「日本の福祉の対象課題を解決する」というピン留めがブレないこと。5年以上も一度もブレずにやっていると、ありがたいことにそういう姿勢を見ている人が応援してくれますから。だから頑張れます。

今は会社という方法ですが、会社がたとえなくなったとしても、いかなる方法を使ってでも利用者本位の福祉を実現したいです。困っている人がいるのにほっとけない。

:ミクシィの事業とも遠く、これまで介護領域は投資対象として考えたことはありませんでした。ただ鹿野さんから話を聞くうちに、「目を背けてはいけない」と認識が変わり、何とかこじつけてでも投資できないか、と思った会社。少子高齢化、人口減少……日本が抱える課題からは“暗い未来”しか思い浮かばない。

そんななか、鹿野さんには、介護領域を変革することで、自分の子どもが「明るい希望を持てる日本」にしてほしいと思っています。


しん・かずひろ◎アイ・マーキュリーキャピタル代表取締役社長。1977年生まれ。一橋大学卒業後、99年NTTドコモ入社。2011年にミクシィに入社、15年4月より現職。主な投資先は、ウェルモ、スタディプラス、ルームクリップ、ポケットメニュー、ジラフ、ファイブ(17年LINEがM&A(合併・買収))など。

かの・ゆうすけ◎ウェルモ代表取締役CEO。1984年生まれ。立命館アジア太平洋大学卒。ワークスアプリケーションズ、東証一部上場企業人事部にてITコンサルタントとして勤務。介護現場のボランティアで感じた問題意識から、2013年に同社を設立。経済産業省「つながるデータで築く未来」など多数講師を務める。

文=山本智之 写真=平岩 享

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事