ヒューマノーム研究所が考える、未来の人間の姿、価値観とは?

ヒューマノーム研究所を起ち上げた、リバネス副社長 井上浄

「人間とは何か」という究極の問いに魅せられ、ヒューマノーム研究所を起ち上げた、リバネス副社長 井上浄。研究の先にみえてくる、未来の姿・価値観とは──。


自らの研究領域を超え、「人間を科学する」というかなり挑戦的なテーマに取り組んでいる

現在、慶應義塾大学先端生命科学研究所の特任准教授として、山形を拠点に、日々免疫の研究に明け暮れていますが、免疫研究者って要するに「健康に生きるために必要不可欠な能力」を追究しているんです。

自身の研究含め、日々、同じく健康に向けて研究を進めるベンチャー企業などと話をしていると、「人間は近い将来、健康になりそうだ」と思うようになったんです。

けれど、現段階では、各分野のスペシャリストが分野ごとに研究データを収集し解析していて、それを統合して人間を科学することができていない。ならば、そのプラットフォームをつくろうと。それが「ヒューマノーム研究所」です。

そもそも、井上さんがつくった「ヒューマノーム」という言葉は、どういう意味を持つのか

科学の世界において、大量のデータが集合した総体のことを「◯◯オーム(-ome)」といいます。たとえば、ゲノム(genome)は、遺伝子「gene」に「ome」を、メタボローム(metabolome)は、代謝産物「metabolite」に「ome」をあわせた造語です。

つまり、「ヒューマノーム」とは、「human」に「ome」をつけて、人間のあらゆるデータの総体をあらわしています。

具体的にヒューマノーム研究所で追究したいことは何か。

個人のデータを徹底的に蓄積することです。これまで、健康を追究する上で、大量のデータから「平均値」を出して解析がなされてきました。この方法は、病気との関連やバイオマーカーを見つけるために極めて有効です。しかし、平均値は果たして一人ひとりにとって最善な解でしょうか。

知りたいのは「自分の」最適な状態ではないでしょうか。人によって健康な状態は違いますし、“平均”という人間は存在しないのです。だからこそ、一人ひとりに焦点を合わせた統合的な解析が必要と考えたんです。
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インタビュー=谷本有香 写真=藤井さおり

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