ポルシェはフォルクスワーゲングループが擁するエンジニア技術の“源泉”のひとつである。もしこのシステムがうまく機能すれば、ベントレー、ブガッティ、ランボルギーニ、フォルクスワーゲンの販売店に導入されることになるだろう。
「ポルシェは、Tech Live Lookをカスタマーエクスペリエンスの質を向上させるための重要なデジタルイノベーションと捉えています」と、PCNAの社長兼CEOを務めるクラウス・ゼルマーは言う。「問題をより速く解決することによって、ディーラーが顧客を待たせることが少なくなります。また、専門家と販売店の技術者の間でより効率的に知識がシェアされることで、サービス全体の質が上がることにつながります」
ポルシェは「Tech Live Look」がコミュニケーションにかかる時間を大幅に縮め、かつその質を高めることになると期待する。筆者が住むロサンゼルスの販売店の技術者は、スマートグラスのODG「R-7」をかけ、2200マイル離れたアトランタのテクニカルサポートチームとつながることになる。
スマートグラスから高画質のライブ映像が送られることで、サポートチームは技術者が見ているものをそのまま見ることができる。そして本社の専門家は、技術者がかけるスマートグラスのディスプレイに、技術的な説明や図式を写していく。スクリーンショットを撮って拡大することも可能だ。技術者はそうした資料を見ながら、車のなかで両手を使って作業できる。ファイルや写真を送ったり、複雑な問題について電話で話したりするよりも、ずっと効率的だ。
2017年に行われたパイロット版のテストが成功したのち、ポルシェは今週、米国の3つの販売店にシステムを導入した。同社は2018年末までに75の販売店に、そして2019年にかけて残りの店舗にシステムを導入するつもりだ。「Tech Live Look」は、今年4月に行われた「Field Service USA」カンファレンスで(優れたサービス向上化の取り組みに贈られる)「Best-in-Class Award」を受賞している。
高性能の車をもっている人ならば、複雑な問題を修理するために数日間、ときに1週間もかかることを知っているだろう。もし「Tech Live Look」が期待通りに機能すれば、こうした難しい問題も、PCNAのサポートチームによるリアルタイムの指示によって解決することができるのである。