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2018.05.31

投資への第一歩には必ずすべきことがある

投資家の裾野が急速に広がっている。最大の理由は、金融庁が中心となって、ジュニアNISA、積立NISAなど、投資初心者や資産形成層にあたる若年層の投資のハードルを下げる非課税投資制度(NISA)を導入し、さらに顧客本位の業務運営の原則の導入を金融機関に推進したことだ。


大きく変わってきた投資環境

投資家の裾野が急速に広がっている。最大の理由は、金融庁が中心となって、ジュニアNISA、積立NISAなど、投資初心者や資産形成層にあたる若年層の投資のハードルを下げる非課税投資制度(NISA)を導入し、さらに顧客本位の業務運営の原則の導入を金融機関に推進したことだ。

もうひとつは、フィンテックが出てきたこと。若い人による、若い人のための、若い人が使いたくなるような資産運用のサービスがつくられ、投資意識のハードルが下がった。

例えば、家計簿アプリのマネーフォワードのユーザーは30代が中心であり、「アプリを使い始めてお金の管理ができるようになったので、今度は資産運用を始めてみたい」といった声が多く聞かれるという。そこで同社は、今年1月に実店舗を設け、新しい投資サービスの提供を試みている。あるいは仮想通貨のビットコインもそうだ。スマホで手軽に始められる資産運用として認知されたと捉えることができる。

また、手軽さの対と言える長期を見据えた投資商品への関心も増加しているだろう。iDeCo(確定拠出年金)や不動産投資のセミナーなど、低金利時代を背景にしてか、多彩な投資セミナーにさまざまな世代が参加している。



実は私も勉強を兼ねて不動産投資を行っている。10年ほど前に東京でアパートを購入。いざ自身で行ってみるといろいろ見えなかったものも見えてくる。空き部屋の問題、消化器などの設備のメンテナンスなど、管理会社が入っているとはいえ、意外にやること(考えること)が多い。ただ、「今度買うなら、あのエリアに」「このくらいの規模で投資したい」といった、“次”への意識が生まれる。多くの人は、それが貸出金利や都市開発といったファンダメンタルな情報の積算へとつながる。不動産に限らず情報の質と量は投資にとって最も重要だ。

金利というと、少しネガティブな話題が出たばかりだ。低金利の環境下で貸し出し先が減少した地銀が、新しい融資先としてこれまで住宅ローンが主だった個人向けに不動産投資ローンを仕掛けた。ただ、一部でその行き過ぎからトラブルが発生。そのため2017年夏に金融庁の指導が入り、その後大きくトーンダウンしてしまったのだ。しかし、継続的な低金利下においては、不動産投資とその貸出しに大きな変化はないと見ている。

投資を理解できる人とそうでない人との差

私の周りにも、不動産投資をしている人は多い。彼らの発想は、「儲け」ではない。その発想が面白い。庭付き一戸建てを城と呼ぶ一昔前の時代とは違い、住む家と、投資する家を分けて考えている。

都内でビルやマンション、アパートを手に入れ、その収入で良いマンションに自らは住む。自宅を買わないということだ。そのほうが自分や家族の生活空間をフレキシブルに変えられる。儲かる儲からないではないこういった合理性のある考え方は、お金持ちの夢の話ではない。不動産投資は融資を受けて建物を購入することがほとんどだ。家賃収入と返済の差が収益となるわけだが、選択肢が限られるサラリーマンでも可能なこの投資手法は、今やこういった合理的な考えのもとに行われることも多い。

一攫千金を投資というのではない。投資とは、自らの資産を自分で運用していくことなのだから、まず自身の収支を明らかにする必要がある。いわゆる棚卸しだ。収入と支出、その見通しを把握できていない人は結構多いのではないだろうか。

逆に言えば、自らを理解できている人は最悪のケースを想定できており、ゆえに大胆な投資が可能になる。大胆ではなく無謀な人は基本的なことができていないと言える。

ちなみに、私個人のポートフォリオは、不動産以外に株式と投資信託、金投資、残りが預貯金だ。いわゆる分散投資型のカタチにはなっているが特に意識したものではない。株式は、この2〜3年で大きく値上がりした。ただ、不動産と同様、長期保有が前提である。面白そうなスタートアップに投資し、その成長を見ていくことが楽しい。

このように、対象が企業であれ、不動産であれ、管理して多くの意見に耳を傾ければ、おのずと投資方針が決まってくるのだ。


藤沢久美
国内外の投資運用会社勤務を経て、96年に日本初の投資信託評価会社を起業。99年、同社を世界的格付け会社スタンダード&プアーズに売却後、2000年にシンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。現在、代表を務める。世界経済フォーラムより「ヤング・グローバル・リーダー」にも選出。国内外の多くのリーダーとの交流や対談の機会が多く、取材した企業だけでも1000社を超え、ネットラジオ「藤沢久美の社長Talk」のほか、書籍、雑誌、テレビ、各地での講演などを通して、リーダーのあり方や社会の課題を考えるヒントも発信している。近著は、『あの会社の新人は、なぜ育つのか』(2018年3月)。『最高のリーダーは何もしない』(2016年2月)。など著書多数

edit by Hideyuki Kitajima | photograph by Setsuko Nishikawa

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