経済協力開発機構(OECD)加盟国で高所得国に分類される各国のうち、米国との比較が可能な17カ国(オーストラリア、カナダ、ドイツ、日本、英国など、いずれも長期にわたる高度成長を実現し、死亡率が米国とほぼ同じ時期に低下し始めた)の中で、米国人男性の寿命は最も短くなっている。
この原因の一つは、米国ではその他の高所得国と比べ、30~50歳という比較的若い年齢のうちに死亡する人が非常に多いことが挙げられる。ヘルスケアの専門家の中には、米国の医療制度の質の問題が原因だと批判する人たちもいるが、中年期までの死亡率の高さを主に説明するのは、医療制度ではない。
平均寿命を縮める「若死に」の多さ
米国で中年期までの男性の死亡率がその他の高所得国より高くなっている最大の理由は、「殺人」が多いことだ。次いで、「交通事故(自動車事故など)」「交通事故を除くその他の事故(はしごから落ちるなど)」による死亡が各国よりも多くなっている。
50歳未満の米国人男性の主な死因
・ 殺人/19%
・ 交通事故/18%
・ 交通事故以外によるけが/16%
・ 周産期異常/13%
・ 心血管疾患・感染症を除く疾患/10%
・ 心血管疾患/8%
・ 自殺/4%
・ HIVを除く感染症/10%
・ HIV/2%
・ その他/7%
50歳未満の米国人女性の主な死因
・ 心血管疾患・感染症を除く疾患/20%
・ 周産期異常/19%
・ 交通事故/18%
・ 交通事故以外によるけが/14%
・ 心血管疾患/9%
・ 殺人/7%
・ HIVを除く感染症/3%
・ HIV/2%
・ 妊娠・出産/1%
・ その他/8%
女性の場合、米国とその他の高所得国の主な死因の間に見られる違いは、事故や殺人による死者の多さではなく、病気で死亡する人が多いことだ。ただ、それでも、死亡率の高さの原因が、医療制度にあるとは言えない。
例えば、肥満が原因の糖尿病の合併症で45歳の男性が死亡したとする。その場合、責任を問われるのは男性を担当していた心臓病専門医ではなく、加工食品業界のはずだ。寿命は医療以上に、社会的な問題と深くかかわっている。