ビジネス

2018.05.30

いま話題の中小企業をブレークさせた3つの「転機」

炊飯鍋「バーミキュラ ライスポット」


異業種だから実現できた「素材本来の味を引き出す鍋」

「世界一美味しい鍋」と呼ばれる商品をご存知だろうか。「バーミキュラ」は食材の旨みを最大限引き出す鋳物ホーロー鍋として知られている。「無水調理」は高い密閉性で素材の旨みや水分を逃さない。そのため水を加えることなく、最小限の調味料で素材の味を生かすことができるのだ。

バーミキュラを開発した愛知ドビーはもともと調理器具製造には一切関わったことがない。1936年からクレーン車の油圧部品などの産業部品を長らく製造してきた老舗メーカーだ。しかし、現代表取締役社長の土方邦裕と弟で代表取締役副社長の智晴が入社する頃には、取引先は減り経営は危機的状況に。打開策を探していた副社長土方の目に止まったのは、海外製の鋳物ホーロー鍋「ル・クルーゼ」だ。

鋳物ホーロー鍋は、鉄などの金属素材の表面にガラス質を焼き付けてつくられるため、保温性に優れている。だが、一方で水分を保持するための重要な要素である「密閉性」ではステンレス鍋には敵わない。鋳物は加熱時に歪みながら固まるため、どうしても隙間ができてしまうのだ。

灯台下暗し。実は、大ヒットのヒントは社内にすでにあった。産業部品の製造で培った「精密加工」で歪みを整えて、密閉性を確保すればいい。そうすれば「世界一美味しいホーロー鍋」ができる。町工場で培ってきた機械技術を転用したのだ。

3年の製造期間を経て、2010年に「バーミキュラ」を発売。SNSでの口コミを通じて徐々に売り上げを拡大した。香港や台湾、韓国での代理店販売も行っている。

次のステージとして狙うのは、アメリカ・ロサンゼルス。ここでヒットした商品は世界に通用すると言われる、ライフスタイル商品の聖地だ。販売するのは、無水調理に加えて炊飯もできる「バーミキュラ ライスポット」。進出準備の一環として、現地のマーケティング会社でテストを行っている。

アメリカ向けにローカライズしたレシピも考案中。醤油を取り入れたローストビーフなど、アメリカ人の好みに合わせながらも日本のカラーを取り入れたレシピで、出店に備えている。

文=野口直樹

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