ビジネス

2018.05.30 12:00

いま話題の中小企業をブレークさせた3つの「転機」




「毎日の作業成果を立体物として確認したい」、「立体物を見せて提案先を納得させたい」という声が相次いだ。そんな需要が、あらゆる業界に多く存在することに強く存在することに古川は驚いた。スピード重視、強度重視、精巧さ重視などいくつもの設定を予め想定していたことも功を奏した。新たな注文分を一台一台手作りで製造しながら、使用法に関するサポートも続けていく。

なぜ大企業も進出する3Dプリンター市場で人気を獲得できたのか? 冒頭の「自慢できる技術力はありません」という言葉に続けて、古川はこう話した。

「これまで手がけてきた全ての商品には、人の生活を豊かにするという点で共通しています。技術面については、分からないことは調べればいいのでどうということはありません。生活に寄り添った製品をつくるときに本当に難しいのは、ユーザーがどのように商品を使うのかをイメージすること。技術者でもデザイナーでも私のような素人でも、製品を『使う』ことにはついては平等に素人です。使用者のことを一から考えなければなりません」

ユーザーが実際に商品を使うシーンを第一に考えてものづくりを続けてきた古川。その蓄積に加え、実際に3Dプリンターを使った際の不満感が原点にあったから「Qholia」はできあがった。最近はユーザーからの質問パターンも把握できてきており、余裕を持って製造できるようになってきたという。

「次世代乗り物メーカー」は折りたたみバイクから生まれる?

通勤でも旅行先でも、あらゆる場面で使用可能。持ち運べる二輪車が知名度を高めている。ハイブリッドバイク「glafitバイク GFR-01」は、2017年にクラウドファンディングで1億2800万円超を調達し、日本最高記録を樹立。さらに2018年2月には和歌山県の公用車に採用された。


ハイブリットバイク「glafitバイク GFR-01」(右)と、持ち運び用ハードケース(左)

glafitバイクは自転車であり、EV(電動バイク)であり、そして両者の融合でもある。自転車のようにペダルを漕いで走行することも、EVバイクとして電力のみで走行することも、両方の動力を組み合わせることもできるのだ。

なぜここまで注目を集めたのか? 強みはライフスタイルに合わせて様々な使い方を選べること。例えば、電車が混雑する都会では朝は電動バイクで快適に通勤。夜はハイブリッド走行でペダルを漕ぎ運動しながら帰宅といった具合だ。加えて本体重量18kgなので持ち運びも可能。専用ケースに入れればスーツケース大になるため、新幹線で運んで旅行先で使用することもできる。

「地方での生活は自動車が基本ですが、自動車で出かけるには面倒な近距離への買い物など使ったり、車に積んでキャンプ地や観光先で使ったりする人が多いですね」と販売元であるglafitのWebディレクターの安藤明子は語る。

glafitの前身会社では、もともと車用LEDやカーオーディオなど、自動車に関連したグッズを製造販売していた。そんな会社が日本ではまだ普及していないEVバイクの製造に踏み切った理由を、「私たちは『日本を代表する次世代乗り物メーカー』を目指すからです」と安藤。

日常の一部になっている自動車だが、国産車の歴史はまだ100年あまり。だとすれば、100年後に日本の道路を走っている自動車のカタチも、今とは全く異なっているはずだ。

「外国では同じようなモビリティは自転車として普通に走っていますが、日本では道路交通法があるため、glafitバイクは原付として販売しています。glafitバイクを前例に日本でもEVが広まって、もっと新たな形のモビリティが登場するといいですよね」
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文=野口直樹

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