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2018.06.04 08:30

米国最大の女性起業家特化ファンド「リシンク・インパクト」


クランチベースの調査では、米国のベンチャー企業上位100社のパートナーのうち、女性パートナーの比率はわずか8%で、58社は女性パートナーが存在すらしないという。さらにピッチブックの調査データによると、2016年初頭以降、女性のみで立ち上げたスタートアップがVC投資を受けられた企業は、全VC投資案件のわずか4.4%で、金額にすると2%以下だった。

リシンク・インパクトの投資案件には魅力がある。投資家たちは、資金調達に苦しむ投資価値の高い女性によるスタートアップの中から、最も期待される投資先をピックアップし、大きな投資効果を得ることができる。実際にファースト・ラウンド・キャピタルが、2005年〜15年の間のアーリーステージに対す300件の投資を検証した結果、創業者に少なくとも1人の女性を含む企業は、設立に女性が関わらない企業と比較して、パフォーマンスが63%高いことが判明した。

わずかひとつのVC企業の成果ではあるが、別の調査研究でも、女性を支援することでよい投資効果を得られる、という結果が出ている。

女性に特化した新たなファンドの中でもリシンク・インパクトは、強力なネットワークを持つファンドのひとつだ。ブラック・エンターテインメント・テレビジョンの共同設立者シーラ・ジョンソンと、2つの製薬会社の共同設立者である久能祐子の2人の投資家は、フォーブスの「自力で成功をつかんだ女性富豪50名」のリストに含まれている。

また、テネシー州の富豪フィスト家のジェニファー・フィスト、UBSウェルス・マネジメント・アメリカも主要パートナーだ。

エイブラムソンには、「女性起業家のためのエコシステムを構築する」という金銭面以外の目標もある。

セクハラ騒動がシリコンバレーを震撼させた2017年夏、エイブラムソンは女性たちへ向けメッセージを送り、アドバイスを受けるように勧めた。

「子育てやさまざまな負担を背負っていませんか? 私たちはそれをポジティブなものとして考えています。あなたたちは、短時間で効率のよい仕事ができます。オフィスには卓球台などありませんよね?それでOKです。私のオフィスにもありません。私たちはいつでも、あなた方の立場にいます。私たちは、あなた方を支援したいのです」。

エイブラムソンの努力の裏には、ほろ苦い記憶がある。実は彼女の母、パティ・エイブラムソンも20年ほど前、50万ドル(約5300万円)を調達し、女性を支援するベンチャーを立ち上げたのだ。しかし、2000年のドットコムバブルでパティは資金を返還しなければならなくなった。

エイブラムソンは言う。「『20年前にも同じ動きがあった』という人もいるわ。でも金額を見てほしい。真の変化の時が来ているサインだと思う」


ジェニー・エイブラムソンワシントン・ポスト、ボストン・コンサルティングなどでビジネスキャリアを積んだあと、モバイルセキュリティベンチャーLiveSafeのCEOに。2015年から現職。元ニューアイランド・キャピタルのハイディ・パテルと共同経営。

文=アシュリー・エベリング 写真=ジャメル・トッピン

この記事は 「Forbes JAPAN 「地域経済圏」の救世主」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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