ビジネス

2018.05.21

「反・破壊的」に物流の未来をつくる起業家と投資家

SPIRAL VENTURESパートナーの岡 洋(左)、オープンロジ代表取締CEOの伊藤秀嗣(右)

伊藤秀嗣が2013年12月に設立したオープンロジは、物流業務のアウトソーシングプラットフォームを運営。物流業務を外注したい事業者と請け負う倉庫会社の空きスペースを結ぶシェアリングサービス。

同社が倉庫会社をネットワーク化し、独自システムの開発・運用により、商品1点単位から従量課金で安価に利用できる。ユーザー数は中小規模・個人のEC事業者を中心に3500アカウント以上、売り上げも前年比730%と右肩上がりで成長している。

岡洋がパートナーを務めるSPIRAL VENTURESは2016年4月、リード投資家として投資を行い、支援をしている。

:伊藤さんと最初にお話をしたのは2015年の年末。ピッチイベントに登壇する伊藤さんを観客として見る機会などはありましたが、お話しする機会がなかった。だから1年以上越しでした。最初から「やっと出会えた」ぐらい(笑)。

伊藤:僕らがシリーズAで資金調達をしようとしていた時期。岡さんたちが新たなファンド組成をした時でもあり、タイミングがよかった。岡さんの会社は東南アジアも投資領域で、すでにEC事業者をはじめ30社程度に投資をされていた。国内外にものの流れがつながる物流を事業にする以上、グローバルを最初から意識していたので、投資をしていただきました。

:投資をした理由は、国内外で伸びる市場で、さらに伊藤さんとCLOの豊川さん、CTOの五十嵐さんの経営チームでしかできないと感じたから。

伊藤さんは前職、富士山マガジンサービスの創業から携わり、中小出版社の物流業務を引き受ける仕組みを作り上げた人物。EC側の負も、倉庫側の負もよくわかっている。オペレーションエクセレンスに作り込んでいくのは、負を理解している事業経験者でないとできないと思いますから。

デューデリジェンス(査定)で提携先の倉庫に行った際、CTOの五十嵐さん自らが現場で倉庫会社のスタッフと作業しながらコードを書いていた。「ここまでやるのか」と衝撃的でした。

伊藤:僕らの事業は、中小規模や個人のEC事業者の方々の、在庫管理や梱包、出荷といった面倒な物流業務を簡単にアウトソースできるというもの。そうである以上、ソフトウェアを作って「はい、終わり」ではない。オペレーションの現場から設計して最適化して改善していく必要があります。

であれば、泥臭く、現場に入り込んでサービスを開発することが最重要です。本社を渋谷や六本木ではなく池袋にしているのも、提携先の倉庫に近いから。

僕らの特徴は、物流業界にいるプレイヤーとカニバらないビジネスモデル。業界の人たちからは「頑張ってるね、そんな儲からないところ」と言われている(笑)。だからディスラプト(破壊)するという発想はないです。

むしろリスペクトして「一緒に物流の未来をつくっていきたい」と思っています。これまで信頼を積み重ねてきた人たちと一緒に、新しい物流を作っていく方が健全だと思いますから。

:伊藤さんは「まだやりたいことの5%しかできていない」と言います。今後の期待は、伊藤さんが海外をはじめ、新規事業に取り組めるような組織にすることですね。

伊藤:海外企業の日本向け越境EC物流サービスを開始し、インドネシア進出も予定するなど、グローバル展開をはじめています。国内でも「あっと驚くような」新しい取り組みを今後、発表できそうです。本当に、物流はまだまだいろいろなことができるんですよ。


おか・ひろし◎SPIRAL VENTURESパートナー。1981年生まれ。千葉大学大学院修了後、2007年IMJに入社。12年IMJインベストメントパートナーズ( 現SPIRAL VENTURES)の立ち上げから参画、現在に至る。主な投資先は、Bizreach、Candee、Z-Works、Tunnel、BERTRAND、Quan、Crowd Castなど。

いとう・ひでつぐ◎オープンロジ代表取締役CEO。1978年生まれ。明治大学卒業後、ネットエイジ(現・ユナイテッド)を経て、富士山マガジンサービス創業メンバーとして成長に貢献。2013年12月にオープンロジ設立、現在に至る。同社はこれまで累計で10億円の資金調達をしている。

文=山本智之 写真=平岩 享

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