現在、JPモルガンのフィンテックバイスプレジデントを務めるダニエル・ドラマー。「In-Residence」というイノベーションプログラムにおいて、世界最大の投資銀行であるJPモルガンと欧州フィンテックスタートアップとの架け橋となる役割を担っている。彼は「ロンドンは世界のフィンテックの中心になりえる」と主張する。
それは、なぜか──。
「一番の理由は、“人の集積度”です。フィンテックはエンジニアだけでは解決しない。銀行・金融関係者、政府の規制関係者、AI(人工知能)、ブロックチェーンなどの技術者・研究者が密に議論ができる環境でないと難しいからです」
英ロンドンには世界最大の金融街であるシティ、そしてオックスフォード大学、ケンブリッジ大学に代表される大学・研究機関も近くにある。米グーグルに買収された英DeepMindをはじめとしたAIスタートアップの集積度も高い。そして、政府もフィンテック育成に積極的で、財務省自ら「英国の成長戦略の要にする」と強調している。
「消費者向けの企業が少ないため、ロンドンのフィンテックの波は見えにくいが、確実に有望な会社が多く出てきている」
“人の集積度”という観点からは、ダニエルのようなキャリアを歩む人が集うということも重要だ。新卒でロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)投資銀行部門に入社し、金融機関を経験。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、オックスフォード大学MBA、ハーバード大学客員研究員(コンピュータサイエンス専攻)にて、フィンテックの技術的側面を学んだ。
起業も経験し、JPモルガンが欧州にフィンテック部門を設立するタイミングで、バイスプレジデントに就任。そして、2018年からはニューヨーク本社で、世界のフィンテックを見る立場となった。
「ロンドンのようなフィンテックエコシステムは現在、他の都市でも成長が進んでいる。『ドイツがフィンテックの文脈でますます重要な役割を担うようになる』という趣旨の論文も寄稿した。ドイツやイスラエル、中国、日本も今後、成長が期待される都市だと見ている」
ダニエル・ドラマー◎英オックスフォード大学在籍中に世界経済フォーラムで「フィンテックがいかにスモールビジネスの事業を変革するのか」というレポートを提出。卒業後は、ハーバード大学の客室研究員(コンピューターサイエンス専攻)としてFintechの技術的側面を学ぶ。