パネラ・ブレッドは北米に約2100店舗を構えるベーカリーカフェのチェーンで、パン、スープ、ドレッシング、コーヒーからなる家庭用商品のシリーズ「Penera at Home」を食品スーパーでも販売する。同社は3月、「Panera at Home」の冷蔵スープの2017年の売上が前年から27%増加し、1億ドル(約109億円)を超えたと発表した。冷蔵スープの売上としてはメーカー問わず過去最大だという。
2017年の米国の缶詰スープの売上が58億ドル(約6344億円/調査会社IRI調べ)であることを考えると、1億ドルは大した数字ではないと思われるかもしれない。しかし、前年から売上が大幅に伸びたのはパネラ商品だけではない。缶詰スープの売上高増加率が0.28%であったのに対し、冷蔵スープ全体のそれは18%だった。
アメリカ人がスーパーの食品コーナー(生鮮食品と加工食品)に落とす金額は年々増えている。2013年には1160億ドル(約12.7兆円)だったのが、2017年には1400億ドル(約15.3兆円)に伸びた。これは米国の全食品・飲料市場4250億ドル(約46.5兆円)の30.5%に相当し、同市場の成長率の54%を占める。
IRIのアナリストでチルド食品の専門家であるクリス・クリス・デュボイスは「(スーパーで販売されている)調理食品だから注目されないが、これがレストランなら爆発的な話題になる伸び率だ」と指摘する。
パネラ・ブレッドで「Penera at Home」部門を統括するマイク・ブファノも「2012年には4000万ドル(約44億円)だった売上が、わずか5年で1億ドルを超えた。この食品カテゴリーには可能性がある」と話す。
冷蔵スープはネットでは買えない
デュボイスとブファノは、パネラ・ブレッドの冷蔵スープが好調な背景には2つの消費者トレンドがあると感じている。原材料の透明性を重視する傾向と、食べるものが体を作るという意識の浸透だ。「人々は、原材料と製造方法の両面でより新鮮で健康的な商品を求めるようになっている。作りたてのスープはよりヘルシーな選択として受け入れられている」とデュボイスは言う。
(実際にはメーカーごとに原材料や製法が異なるため、冷蔵スープが缶詰スープに比べてよりヘルシーであるというデータはない。パネラ・ブレッドの商品は人口添加物を排除していることが売りだが、ナトリウムはさらに減らせる余地があるとしている。また、同ブランドで最も人気があるブロッコリ・チェダースープは特にヘルシーな食品とは言い難い)
現実的には、冷蔵スープが混迷する食品スーパー業界の救世主になる可能性は低い。問題は他にも山積みだからだ。しかし、棚に並ぶ膨大な種類の食品の中で冷蔵食品の売上が伸びている事実は注目に値する。
デュボイスは「冷蔵スープをはじめとする冷蔵食品は、食品スーパーがEコマースに対抗する上で重要な鍵になるはずだ。便利さを求める消費者トレンドにも合っている。(日持ちする)食品を買いだめする習慣はもう古い」と言う。
ブファノも同意する。「アマゾンローカル(地域のレストランやデリと提携したサービス)やホールフーズと提携したサービスがあるとはいえ、冷蔵スープはインターネットではなかなか買えない。アマゾンとの差別化を図るのにぴったりな商品だ」