CEO最終年に登場したパーソナライズなモデル

アンジェロ・ボナーティ オフィチーネ パネライCEO(最高経営責任者)

2018年のパネライは、印象的な新作を用意していた。

その筆頭が超複雑機構の「ラストロノモ ルミノール1950 トゥールビヨン ムーンフェイズ イクエーション オブ タイム GMT」。とても高い技術が投入されていることはもちろんだが、ほぼオーダーメイドに近い発想でつくられている。

「パーソナライズですね。それが大きなポイントです。日の出、日の入りの時刻をお客様がどこにお住まいか、によって対応させていただきます。東京にお住まいでしたら、東京に合わせてモデルをつくるということです」

このモデルには、パネライ初となるムーンフェイズ機構など多くの高等技術が搭載されているが、優先されるのはどんな機構を載せるかではない、とボナーティCEOは言う。

「何年も前から温めてきたもので、この機構自体もすぐにつくれるものではありません。しかし、発想としては機能というよりまずパーソナライズでした」

そして、「パネライは他のブランドと違うところを目指していますから」と付け加えた。

そんなボナーティCEOも今年6月で退任する。パネライが1998年に国際的デビュー(市販化)を果たして21年。その間、常に陣頭指揮を執っていたのがアンジェロ・ボナーティ氏だった。

「いろんな経験をさせてもらいました。それから優秀な人材にもたくさん出会えました。この21年を振り返って思うのは、企業というのは人材。人間関係が重要だということです。これが経営するうえでいちばん難しい。心がけていたのは、まず相手を理解すること、尊重することです」

人を大切にして経営にあたってきたボナーティ氏の最終年に登場したのが、パーソナライズを主眼においた“ラストロノモ”。彼らしい締めくくりである。

L’ASTRONOMO LUMINOR 1950 TOURBILLON MOON PHASES EQUATION OF TIME GMT – 50mm



“ラストロノモ”は、ガリレオ・ガリレイが行った天体観測の400周年を記念して2010年に誕生したモデルで、今回が2作目となる。この新作は、ガリレオに捧げるモデルとして、パネライ初のムーンフェイズを搭載。さらにデイト表示にポラライズドクリスタルを用い、特許を取得している。ケース径50mm。サテンチタンケース。パワーリザーブは96時間。10気圧(〜100m)防水。手巻きメカニカルパネライ自社製P.2005/GLSキャリバー。予定参考価格 2,600万円(税別)


Angelo Bonati ◎1951年、イタリア・ミラノ生まれ。イタリアのサクロ・クオーレ・カトリック大学を卒業し、宝石業界に就職。その後、ダンヒルなどの時計・ライターを扱うタバコ・インターナショナル(のちにカルティエに吸収合併)勤務、トラサルディの国際マーケティング・販売マネジャーなどを経て、97年に現リシュモングループに戻り、2000年より現職。巧みなブランド戦略でパネライの成長に大きく貢献した。

PANERAI
http://www.panerai.com

文=福留亮司 編集=高城昭夫

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