そんな無謀ともいえるビジネスモデルに限界が見えてきた。現地メディアの報道によると、自転車シェア大手の「Mobike」がフードデリバリーの「Meituan-Dianping(美団-大衆点評)」に買収された。関係筋によると金額は27億ドルから34億ドル(約3600億円)の範囲という。
中国のスタートアップ企業らはシリコンバレーの企業にならい、収益性を度外視した成長ありきの姿勢を貫いてきた。Mobikeや「ofo」といった企業は過去2年で10億ドル単位の資金を調達し、膨大な数の自転車を各都市に配備。利用者にはプロモーションとして、ほぼ無料でサービスを提供する場合も多く、自転車の盗難や破壊も日常化していた。
しかし、このようなビジネスモデルは限界に達したようだ。Mobikeの通年の売上はわずか1800万ドルであるのに対し、年間のコストは6700万ドルといわれる。同社を買収した美団は、年間4900万ドルの赤字と10億ドルの負債を抱えるMobikeを一体どのように再生させるのだろうか。
関係筋によると美団はMobikeの買収と並行して、同社の配車サービス事業を強化したい考えだという。同社は3月に中国の7都市で配車サービス「美団打車(MeituanDache)」を立ち上げており、自転車シェアと配車サービスの相乗効果を狙っているという。
美団が運営する生活情報の口コミアプリ「大衆点評」も巨大なユーザーベースを抱えており、同社はそのエコシステムに配車サービスや自転車シェアを組み入れることでシナジーを狙いたい考えだ。
一方で、配車サービス事業で先行した「滴滴出行(Didi Chuxing)」もフードデリバリー市場に乗り込もうとしており、既に人員の募集を開始している。つまり、配車からスタートした「滴滴」と、食品デリバリーから始動した「美団」が互いの領域に乗り込み、新たな競争を繰り広げることになったのだ。
中国の自転車シェア分野では先月、ofoがアリババから新たに8億6600万ドル(約926億円)を調達したことも報じられた。単体では事業の継続が危ういスタートアップを、大手のテック企業が様々な思惑から支援しようとしている。