借金600億円を返済した千葉市長の「NO」と言える行政

現千葉市長、熊谷俊人


各領域でさまざまな利害関係者や既得権益者と対峙する市長にとって、勇気のいる発言だ。地方でも国でも、正面から同様に発言できる政治家は少ない。「できないことを“NO”と言うのも政治・行政の役割だと」とも熊谷市長は弁じる。

冒頭に登場した高い得票率を誇る2人の政治家も、熊谷市長との共通点を併せ持つ。小野寺防衛大臣は批判を恐れず防衛省の情報開示を進めるとともに、丁寧かつ論理的に説明を行う。石破氏も、国民やメディアから叩かれるリスクをとってまで、「憲法」や「核」を正面から語る。

耳に聞こえの良い言葉をひたすら連ねるのではなく、課題に正対し、時に耳の痛い発言もする政治家が、確実に支持を得ている事実は、疑いなく注目に値する。

政治家にも家族がいて生活がある。「落選すれば、ただの人」と言われる政治家が、声の大きい少数派や支持者を意識し、ほんとうに進めたい政策や主張を躊躇する気持ちもわからなくもない。

しかし、昨今は、情報をオープンにし、是々非々の主張を丁寧に行う政治家が、選挙でも強さを証明している。もしかすると、いま、利害関係者や既得権益者が持つ力は、政治家が恐れるほどには強大ではないのかもしれない。

熊谷市長は数多くの改革を成し遂げた。しかしながら、いがみ合うような抵抗勢力は存在せず、選挙では圧倒的な支持を得る。今後、求められる政治家のあるべき姿が、おぼろげながらそこから見えてくる。

連載 : 公務員イノベーター列伝
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文=加藤年紀

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