買収の噂は以前から出ていたが、その交渉は実現に向けてさらに進展したと見られている。ロイターが4月7日に掲載した記事によると、ウォルマートは既にデューデリジェンスを終えており、Flipkartの株式の51%、もしくはそれ以上を100〜120億ドル(約1.3兆円)で買収したい意向だという。
アマゾンもFlipkartの買収を視野に入れているが、これはインドの独占禁止法に抵触する恐れがあり、政府の厳しい監査をくぐり抜けねばならないとの報道もある。
Flipkartは2007年にアマゾンの元社員のSachin BansalとBinny Bansalによって設立された。同社は当初からインド版アマゾンを目指し、本のオンライン販売から事業を始動した。これまでの累計資金調達額は60億ドル以上におよんでいる。昨年夏にソフトバンクの「SoftBank Vision Fund」から25億ドルの出資を受けた同社は、インドで最も企業価値が高いインターネット系スタートアップ企業の一社となった。
アマゾンがインド進出を果たして以降も、FlipkartはインドのEコマース界で大きな存在感を保っている。インドのEコマース市場は2026年まで年平均成長率30%で拡大し、取引総額は2000億ドル(約21兆円)に達すると見込まれている。
今後の中国のアリババとの競争をひかえ、インド市場は米国のEコマースの巨人たちにとって重要な拠点となる。Flipkart側としても米国企業の資本参加により、サプライチェーンの増強が期待できる。
2012年から2013年にかけてインド進出を果たしたアマゾンは、現地で少なくとも50億ドルの市場をとると宣言した。仮にアマゾンがFlipkartを買収すれば、2社でインド市場の80%近くを押さえることになる。Flipkartとしてもアマゾンと提携を結べば、インドでのポジションを揺るぎないものにできる。
一方でウォルマートとしても、長年インド市場を視野に入れてきたが、インド政府の海外企業からの直接投資規制がその障害となっていた。同社はインド国内に会員制卸売り形態の「ベスト・プライス・ホールセール」を20ヶ所で運営しているが、消費者への直接販売は行っていない。また、過去には地元財閥のバーティ・グループと提携したが、財務省の調査を受けた結果、2013年に提携を解消した。
ウォルマートは世界最大の小売業者の地位を保ってはいるものの、Eコマース分野への取り組みでは出遅れた。同社は2016年に「Jet.com」を30億ドルで買収し、オンライン販売を強化しようとしている。
ウォルマートがFlipkartとの交渉を開始したのも2016年だった。当時、Flipkartもアマゾンのインド進出に直面し、脅威にさらされていた。
ウォルマートとの提携が実現すれば、Flipkartはオンラインとオフラインの双方で強固な地盤を築き、アマゾンに対抗できる。しかし、両社のインドでの戦いに決着がつくのはまだ当分先のことになりそうだ。この戦いは結局のところ、米国でのウォルマートとアマゾンの戦いがインドで再現されたものといえるだろう。
アマゾンとウォルマートのどちらがFlipkartを買収するにしろ、それはインドのEコマース市場の成長をより確実なものにするだろう。また、今後さらに他の海外企業がインド市場に資本参加するケースも増えるはずだ。