「カルメン・サンディエゴ」は1985年に発売されたビデオゲーム「Where in the World is Carmen Sandiego」から派生したフランチャイズで、世界をまたにかける国際窃盗団の女性リーダー、カルメン・サンディエゴの冒険を描くシリーズ。
ゲームのプレーヤーは捜査員として彼女を追う過程で各国の地理や歴史などを知ることができ、教育ソフトとしても人気がある。90年代にアニメ版も制作されており、日本では「怪盗カルメンサンディエゴ」のタイトルで放送された。
ネットフリックスは昨年4月、「カルメン・サンティアゴ」のアニメシリーズの製作を発表したが、映画情報サイト「Deadline」が報じたところによると、実写映画も作るようだ。主人公のカルメンは、両作品とも「ジェーン・ザ・ヴァージン」のジーナ・ロドリゲスが演じる。また、公開に合わせて「Houghton Miffin Harcourt」社から本も出版されるという。
過去に人気を博したキャラクターを使った映画のフランチャイズ化は、まさに今のハリウッドのトレンドだ。カルメン・サンディエゴは過去に様々なメディアで商品化されているが、実写の劇場用映画には一度もなっておらず、稀少な手つかずの宝と言える。その宝に、大手の映画会社ではなくネットフリックスが手を伸ばしたことは注目に値するだろう。
筆者にとって一つ心配な点があるとすれば、ネットフリックスと大作映画の相性だ。ネットフリックスはこれまで、映画祭などで数々の優れた中小規模の劇映画やドキュメンタリーの権利を獲得してきた一方で、大作にはあまり恵まれていない。
女性版「インディ・ジョーンズ」として期待
具体的なタイトルを挙げると、前者に属する「君はONLY ONE」、「13th —憲法修正第13条—」、「セブン・シスターズ」(日本ではネットフリックスオリジナルではなく劇場公開)などの方が、「ブライト」、「Mute/ミュート」、「ウォー・マシーン:戦争は話術だ!」といった大作よりはるかに面白かった。
しかし、観客に足を運んでもらう必要がある劇場用映画に比べて、定額制配信サービスであるネットフリックスは個別の作品の質を保証する必要に迫られていない。作品の出来にかかわらず、いかにも大手スタジオが企画しそうな「カルメン・サンディエゴ」をネットフリックスがフランチャイズ化すること自体が、ハリウッドにとって脅威となる可能性は高い。
これは(同様にハリウッド受けする題材と思われていた)「Death Note/デスノート」とは別のレベルの脅威だ。
考えてみれば、世界を飛び回る有名な女性キャラクターを主人公としたアクション映画シリーズがこれまで作られてこなかったことが不思議だが(ツイッターでは女性版「インディ・ジョーンズ」として期待する声もある)、ハリウッドの古い男性上位の価値観により、ヒットするはずがないと思われてきたのかもしれない。
この点においては、伝統に縛られていないネットフリックスに勝算がある。映画版「カルメン・サンディエゴ」が作品の質の面でも成功すれば、正真正銘のゲームチェンジャーになるはずだ。