「唯一無二の起業精神を持ち、自分の道を切り開いている人、また将来性のある人に注目したい」と話すチョウ自身も若手起業家だ。
現在33歳の彼女は、2013年に香港の流行発信地ソーホーにこぢんまりとした「リトル・バオ」をオープンし、毎晩のように行列ができる人気店に育て上げてきた。店名のバオは、蒸しパンに豚バラや鶏肉を挟んだ中華風ハンバーガーのことで、看板メニューとなっている。
さらには昨年、より洗練された中華ビストロ「ハッピー・パラダイス」を開店した。ネオンがきらめく店内では、伝統的な広東料理をアレンジしたメニューが並び、ホワイトティー(茶の灌木の新芽と若葉から作られる稀少なお茶)、緑花椒、中国アーモンドなどを使ったユニークなカクテルも話題を呼んでいる。
「私が起業するにあたり一番大変だったのは、信用を得ることだった」とチョウは語る。「私が給料を払える確証が100%ではないという理由で、仕事を断られることもあった。(起業家は)説得力を持つこと、従業員とビジョンを共有することが重要だ」
チョウはまた、ある時期、大きな成功をおさめながらも自身の力を信じられずにいたと打ち明ける。
「その頃に受けた最高の助言は、『人々はあなたがすることや、あなた個人を好きだから(チョウの店を)選んでいる。あなたが心を開き、あなた自身でい続ける限り、大丈夫』というものだった。反対にこれまでに受けた最悪のアドバイスは『現状に満足すべき。それ以上を求めるべきではない』というもの。それを言った人は私のことを大好きでいてくれる人だったのだけれど」
チョウによれば、アジアは「今、世界中で最も盛り上がっている地域」だ。「ビジネスやアートを通して、自分たちの文化を楽しんだり欧米と共有したりすることができるようになった。かつてのように受け取る一方ではなくてね」とチョウは言う。
アジアのスタートアップをめぐる状況にも期待を寄せる。
「アジアの人間には今でもハングリー精神がある。中国や韓国といった国では、とても厳格な労働倫理があり、人々は1日16〜18時間働くことを厭わない。クレイジーだと思われるかもしれないけど、私自身もそれくらい働いている。他の人の倍働けば、成功も倍になるから」