研究チームは「機械とロボットを導入する利点は、効率性向上と作業コストの削減が期待できること。一方で、人が人間ではなく機械と働くようになった場合にどのような行動を取るかを考えなければならない」と指摘する。
新たなチームメンバー
研究チームは、1人のマネジャーが2人の従業員を管理するモデルを作成した上で、人間2人から成るチームと、人間1人と機械1台で構成されるチームに、複数のシナリオに基づいたタスクを実行させた。
その結果からは、いくつかの興味深い事実が判明した。例えば、技術の導入により人間の作業方法だけでなく評価や報酬にも根本的な変化が生じるようであれば、期待している効果が出ない恐れがあることが分かった。
また、報酬に関して厄介な問題が生じる可能性があることも分かった。現在、大半の企業はチームの功績に応じて報酬を与えている。この制度には、チームの目標が達成できさえすれば怠け者も働き者も平等に報酬を得てしまうという明らかなデメリットがある。一部の企業はこの仕組みを使わず、従業員の個人的な功績だけを見て報酬を与えている。どちらの手法を使うにせよ、従業員にとっては同僚の働きぶりを観察する動機となる。
ここで同僚が人間ではなくロボットになるとどうだろう? 研究チームは、新たな技術を導入するコストと効果を評価する上で、こうしたチーム内の力関係を考慮することが欠かせないと指摘。さらに、技術の導入により、上司がチーム内のパフォーマンス水準を正確に把握できないようになる可能性もあるという。上司の監視能力が下がれば、チームの人間が怠けるようになる恐れがある。
新たな働き方
これはそれほど驚きではない。マサチューセッツ工科大学のエリック・ブリニョルフソン教授(経済学)は、人工知能(AI)の発達を電気にたとえている。電気は汎用性のある技術で、それ自体が生産性を向上させたわけではないが、この技術を基盤として新たな技術やプロセス、ビジネスモデルが作られ、生産性がアップした。
この見方は、アクセンチュアが最近公表した報告書でも共有されている。同社によると、第1世代の自動化技術投資では、機械が主に単体で機能していたが、本当の効果が現れるのは、人と機械がより効果的に協働できたときだ。アクセンチュアは人と機械の統合によって利益を38%増加させることも可能だと結論している。
私たちは今後、AIと協働する機会が増え、自らの意思決定を強化する自律判断支援サービスを利用するようになるだろう。
技術を購入するだけですぐに効果を得られることは決してない。その代わり、チームのワークフローや、新たな技術がこうしたフローに与える表面的影響と潜在的影響の両方を適切に理解することが必要となる。