平井はこう言う。
「欧州を中心とした複数の保管所や取引企業が、我々の描くエコシステムに共感し、パートナーシップを結ぶことができたのです。金現物はイギリスの現地法人BTJ UKで保有します。この体制をバックボーンとして、BTJ UKで金現物の最小取引単位にタグを付け、所有権管理を行う帳簿ツールとしてBullion Token(ブリオントークン)を発行します」
それはつまり、ブリオントークンが現実的に金現物と交換可能なものとなり、その価値を安定化させることを意味する。もちろん、これは仮想の金の話ではない。実際に金をデジタル化した世界初の「デジタルゴールド」が誕生するのである。
ブリオンペイのインパクトブリオントークンは金現物のポテンシャルを最大化する試みである。だが、それだけでは大きなユーザーベネフィットは生まれない。より多くの人々に活用されるサービスにするためにはどうすればいいのだろうか。
そこでブリオントークンをベースとした新たな決済システム「Bullion Pay(ブリオンペイ)」の開発を進めた。まずその第1弾として、「Bullion Pay APP(ブリオンペイ アプリケーション)」を用いたオンライン決済システムをローンチするという。
システム利用の流れはこうだ。
例えば、ユーザーはスマホからオンラインショップにアクセスし、トークンを利用して商品を購入する。ショップはそれを受けてタブレットにあるアプリで、トークンの売却をリクエスト。するとアプリはブロックチェーンに命令を出し、その指示を受けた金取引企業は、ショップに対しトークンと交換した金現物の売却代金を支払う。
その一方で、アプリはこのプロセスでスマートコントラクトを作成し、ショップとユーザーから承認を得ることで、両者の所有権移転の契約締結を迅速に行う。従来の決済システムのように決済事業者が介在せず、ショップとユーザーの直接的な取引を実現するのだ。
APIサーバーを用いたトークンの金取引市場向けの売却・交換機能をアプリに提供することで、これまで金を購入した取引企業にしか売却できなかった状況を克服した。提携先の金取引企業を通して最もレートが高い市場を選択し、瞬時に売却することを可能にしたのだ。
もちろんショップは、受け取ったトークンをそのまま保持することも、金現物に交換することも、あるいは金を売却し指定の法定通貨に交換することも可能である。
またスマホやPCを使ってオンライン上で取引が完結するので、専用の端末を導入する必要がなく、低コストで決済を行うことができる。プラットフォームのイメージはペイパルやデビットカードと似ているが、売買というよりも、商品と金現物の物々交換に近い取引形態である。
平井によると現在、アプリやAPIの開発が最終段階にあり、実際のシステム運用に際しての法的な確認作業を進めているという。
流動性が低い──。そんな理由で誰も気づかなかった金の決済ニーズの一隅を鮮やかに照らしたブリオンペイ。その黄金の轍は、ブロックチェーンのように連なり、そして輝きを増していくのだ。
平井政光◎北海道出身。法政大学卒業後、船井総合研究所で金融商品企画コンサルティングに従事した後、マレーシア資本の投資助言会社CEO兼日本株運用責任者として勤務。ブリオンジャパンのマーケティング担当副社長を経て、現職。
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