資産運用会社を経営する筆者の身近にも、アマゾンを評価し、同社株を保有している人たちがいる。だが、彼らの意見を聞いてきた中でも、筆者にはいまだに、アマゾンについて気掛かりなことが一つある。それは、第三者が同社のプラットフォームを利用して商品を販売できる「マーケットプレイス」の運営方法だ。
株価収益率が330倍を超える企業について何か残念なニュースが報じられれば、その株価はいつでも簡単に下落に転じる。事業に関して堅実とは言えない部分があれば、株主や株の購入を検討している人たちにとってそれは、厳しい目で詳しく調べなければならない問題だ。
米紙ニューヨーク・タイムズは昨年11月にアマゾンのマーケットプレイス事業について、「売上高は直近の四半期の決算報告で前年比42%増を記録。8億ドル(約854億円)近くに上る」と伝えた。そこから推計すれば、同事業の売上高は全体の約13%を占めていると見られる。
在庫を補充するのはマーケットプレイスに出店する第三者であり、アマゾンはその第三者から出店にあたっての手数料と売上高の一部を徴収する。同事業はアマゾンのビジネスの中でも、マージン率が高いと考えられる。
マーケットプレイス事業のビジネスモデルは、ショッピングモールとそう大きくは変わらない。モールに出店する店舗は施設の運営事業者に対し、賃貸料やその他の料金に加え、売上高の何割かを支払う。古くから採用され、利益を上げてきたモデルだ。
ただ、モールにはスペースに制限がある。運営事業者はより多くの買い物客を呼び込み、モールを全ての出店者にとってより価値の高いものにするために、顧客の期待に応える店を慎重に選び出店を認める。一方、アマゾンの店舗スペースは無制限だ。そのため希望者は誰でも出店することができる。そして、中には怪しげな出店者も存在する。