英国の経済誌「エコノミスト」の調査部門「EIU」は昨年、中国企業にとって魅力的な海外市場のランキングの最新版を公開した。そのなかで、イスラエルは11位に入っており、2015年の17位から順位をあげていることが分かった。
イスラエルで存在感を誇る中国企業の1社が、深センに本拠を置くテクノロジー企業の「Kuang-Chi」だ。同社は2016年、テルアビブに投資ファンド「GCIファンド(Global Community of Innovation Fund)」を設立。3億ドル規模の国際的ファンド事業を開始した。
Kuang-Chi会長のルオペン・リュウ博士は「イスラエルは中東のシリコンバレーと呼ばれ、イノベーション領域で世界的評価を獲得している。ハイテク領域では大きな視野を持つ優れた起業家らが多い」と話した。
イスラエルの人口は約850万人と、国内の市場規模は非常に小さい。そのため、優れたテクノロジーを持つ企業らは伝統的に、米国をはじめとした海外市場に活路を見出してきた。
Kuang-Chiがイスラエル企業に投資を行う理由をリュウ博士はこう説明した。「イスラエルのテック企業にとって中国は理想的な市場だ。スマートシティやコンピュータビジョン、コネクティッドホーム、AIやロボティックス分野で彼らの技術に関心を持つ中国企業は多い」
同社がこれまで出資した企業には、ドローンメーカーの「SkyX」やAI企業の「Beyond Verbal」、コンピュータビジョンの「EyeSight」、動画アナリティクスの「AgentVi」などがあげられる。
アリババもイスラエル投資を活発化
実際、中国で存在感を高めるイスラエル企業は増えている。昨年9月には中国の「上海復星医薬」が出資するヘルスケア企業「Sisram Medical」が香港で上場。イスラエル企業としては初めて中国の株式市場にデビューした。
11月にはイスラエルのスタートアップ10社が、北京で開催されたアクセラレータープログラムに参加した。この取り組みはイスラエルの経済産業省も支援し、北京のコンサルティング企業「ShengJing Group」や中国企業の海外進出を支援するインキュベーターの「DayDayUp」も参加した。
また、今年に入りアリババはイスラエルのデータ分析企業「SQream Technologies」に2000万ドルを出資した。また、中国のヘルスケア企業の「Ogawa」は1000万ドルの投資ファンドを組成し、イスラエルの医療関連企業への出資を行おうとしている。
イスラエルのスタートアップ事情に詳しいジャーナリストのPhillipe Metoudiは、次のように述べている。「イスラエル人と中国人は多くの共通点を持っている。教育を重視し、家族の絆を大切にし、年上の人々を敬う。こういった伝統的な価値観に加え、若い世代の間で起業家精神が高まっている点でも共通している。イスラエルと中国は最適な組み合わせだ」