フェイスブックが「世界にとって善き存在」になるには(前編)

Photo by Paul Marotta/Getty Images

多くの親には、自分の残す遺産を子どもの視点から考える瞬間がある。フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は先日、こうした考え方の変化を次のように表現した。

「マックスとオーガストが大人になったとき、父親が作り上げたものが世界にとって善いものだったと感じることが、私にとって重要」

マックスとオーガストは、ザッカーバーグの幼い娘たちだ。彼はまた、フェイスブックを「直す」ために必要であれば、利益を犠牲にすることもいとわないと述べている。

フェイスブックについては、投資家や同社の元役員、研究者、米国の諸機関を含め、世界の多くの国や人々が、利用者の心理状態に与える悪影響や、フェイクニュースの政治利用といった多くの問題を抱えていると考えている。ザッカーバーグの元メンターで初期のフェイスブック投資家、ロジャー・マクナミーは、多くの関係者が持つ感情を次のように的確に表現した。

「まるでSF小説を読んでいるようだ。人々を団結させるとして称賛された技術が、人々を分断し、民主主義を損ない、惨状を生むために敵対勢力に利用されている」

マーク・ザッカーバーグはこうした批判を無視してきたわけではない。当初は問題の存在を否定していたとの批判もある一方で、ザッカーバーグは現在、フェイスブックの問題解決を試みた場合に同社の規制、競争力、事業モデルにどのような影響が生じるかを積極的に見極めるようとしている。米誌ワイアードは先日、ザッカーバーグの闘いを「地獄の2年間」と呼んだ。

現在同社が抱える問題を解決することは極めて重要だが、果たしてこれさえ解決すれば、マックスやオーガストが大人になる頃にはフェイスブックは「世界にとって善い」存在になるのだろうか?

コンピューター開発のパイオニアであり教育イノベーター、哲学者のアラン・ケイはこの点に悲観的だ。全ての技術は、人間の傾向や生まれつきの衝動を増幅させる、もろ刃の剣となる。印刷機が啓蒙主義運動を起こしたり、コンピューターが科学に革命をもたらしたりしたように、技術の活用で利益がもたらされることもあるが、逆に悪影響がもたらされることもある。

ケイはフェイスブックによって、ストーリーや地位、血縁関係に対する感受性といった人間の普遍的特性がナルシスト的に強化され、偏狭さや部族的な同族意識が拡大すると考える。これらは、私たちが現在経験している問題や動乱の根本原因だ。

ケイは電子メールで、これはフェイスブック特有の問題ではないと指摘し、「コミュニケーションに関する現代の発明の大半は、次の副作用をもたらす可能性がある。識字能力以前の思想形態が識字能力を脇に追いやり、社会が口述的な旧来型社会の部族的思考法へと退化してしまう」と述べた。フェイスブック、グーグル、ツイッター、インスタグラムなどの巨大な技術プラットフォームが特に危険な理由は、広い範囲に影響力を持つため、その影響力が増幅することにある。
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編集=遠藤宗生

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