米疾病対策センター(CDC)によると、米国では1970年代以降、子供から若者までの世代の肥満率が 3倍以上に上昇した。現在ではこの世代のおよそ5人に1人が肥満となっている。また、CDCの調査結果によれば、年間のいずれの日をみても、2~19歳の子供・青少年の34.4%がその日に1度はファストフード店で食事をしている。そうした食習慣が、この世代が成長とともに体重過多になる一因だと考えられるという。
これまで多くの人たちが、マクドナルドが健康的なメニューを提供しないのは顧客が求めていないからだと主張してきた。だが、時代は変化し、子供を持つ人たちを中心に、より多くの人が食品表示ラベルを見て購入する商品を選び、自宅でも外食時でも、より健康的な食事を心掛けるようになっている。砂糖入りの炭酸飲料水の消費量は大幅に減少し、ボトル入りの飲料水の売上高は増加を続けている。
5つの改善目標
マクドナルドがハッピーミールに関するグローバルな目標として掲げるのは、次の5つだ。
・バランスのとれた食事を提供
ハッピーミールはセットで合計600キロカロリー以下とする。飽和脂肪と砂糖から摂取するカロリーはそれぞれ全体の10%以下とし、塩分は650mg未満とする。
・シンプルな材料で作る
味や安全性、品質、コストを犠牲にすることがない範囲で「可能な限り」、人工調味料、人工着色料、人工保存料を使用しない。
・透明性を高める
栄養成分に関する情報を、店内でもウェブサイト上でも閲覧可能にする。
・責任あるマーケティング
子供を対象としたハッピーミールの広告、マーケティング活動は全て、新たに定めた栄養基準に基づいて行う。
・革新的なマーケティングで推奨される食品の摂取を促す
フルーツや野菜、低脂肪の乳製品、全粒粉、脂肪分の少ないタンパク質、飲料水の摂取を促す。
チーズバーガーには「問題」も
マクドナルドは2013年、子供の健康促進を目指す非営利団体The Alliance for a Healthier Generation(アライアンス・オブ・ヘルシアー・ジェネレーション)と提携。メニューの改善や健康的な食事に関する情報の伝達についての5項目の実現を掲げ、取り組みを進めてきた。公共政策に関するコンサルティングを専門とする米キーブリッジの報告書によれば、同社はそれら5項目について 2016年までの実現を目指していた中間目標の全てを達成したという。
今回発表した新たな目標については、これまでと大きく異なる点が一つある。顧客に馴染みのない(または求められていない)ベジバーガーやサラダなどをメニューに加えることによって、顧客の行動を変えようとはしていない点だ。その代わりに、塩分や糖分の量を減らすという目には見えない変更を行う。
ただ、フライドポテトは提供する量を減らし、セットに付ける飲み物はボトル入りの飲料水とする。さらに、セットからはチーズバーガーを除外する。チーズバーガーを入れることで、全体の塩分量が200mg増えてしまうためだ。
チーズバーガーを外したことについては、消費者の抵抗も予想される。実施からそれほど長くたたないうちに、塩分の低いチーズを使ったチーズバーガーの提供を始めることになる可能性もある。
米国では、ミシェル・オバマ前大統領夫人が子供の肥満を減らし、米国をより健康的にするための活動に取り組んだ。マクドナルドは今後、この活動を引き継ぎ、主導していく存在となるのかもしれない。