その後の数年の間、エイサーは凡庸なパソコンの製造を続けたが、出荷台数は減少を続けた。しかし、創業42年の同社は2008年にグーグルとパートナーシップを結び、その後Chromebookの開発に乗り出した。
調査企業「Canalys」のデータでは2017の第3四半期までの期間で、世界のChromebookの売上は850万台に達し、2015年の同期間との比較で193%増を記録した。市場を牽引するのは米国の公立学校での需要だ。「IDC」の調査では米国の教育分野向けのパソコンのうち、Chromebookのシェアは出荷台数ベースで72%に達している。
エイサーは今や、Chromebookの製造元として世界5社のなかでトップの地位を占めるようになった。同社は2016年時点で世界6位のコンピューター製造業者で、時価総額は29億4000万ドル(3200億円)に達している。
IDCによるとデルやヒューレット・パッカード、レノボも学校向けにグーグルのPCを製造している。サムスンも一般消費者向けにChromebookを販売している。
「エイサーはリスクを恐れず新たなテクノロジーにチャレンジし、他社に先がけてChrome OS分野に乗り出したことで今のポジションをつかんだ」とIDCの担当者は述べた。他のPCメーカーと同様に2013年にはスマートフォン市場にも参入したが、注目されることはなかった。
エイサーは2011年以来、11インチから15インチまで様々なサイズのChromebookを20モデル以上発表してきた。タッチスクリーンタイプのものやスタイラス付きのもの、さらにはデスクトップ版のChrome OSパソコンも発売した。
エイサーは先日、11.6インチの耐久性に優れたモデル「C732」を発表。この機種は防水性能を持ち、衝撃にも強いことが売りとなっている。
低コスト競争の勝者
台北の調査企業「TrendForce」のアナリストは「教育市場ではエイサーとデル、HPの3社が主要なプレイヤーとなっている。消費電力を抑えつつも優れたパフォーマンスを持つモデルが広く受け入れられている。なかでもエイサーは意欲的に新たな製品作りに取り組んでいる」と述べた。
学校向けの市場では価格を抑えることが非常に重要だ。エイサーは2015年に200ドル程度のモデルを発表したことで、教育関係者の支持を集めた。
「エイサーがこの市場で成功できたのは、優れた製品を送り出しつつ、価格戦略で優位に立てたからだ。他の企業は300ドル程度のマシンでは利益が出せないと思いがちだ。しかし、エイサーは昔から利幅の狭い分野でも生き抜いていく知恵を身につけていた」と台北のアナリストは話した。