ハーシーはポップコーン「スキニーポップ」を手掛けるアンプリファイ・スナック・ブランズを16億ドル(約1800億円)で、キャンベルスープはポテトチップスの「ケープコッド」などで知られるスナイダーズ・ランスを約49億ドル(約5510億円)で買収することで合意した。
小規模メーカーを傘下に取り込むことで両社が狙うのは、約277億ドル規模の「塩味系」スナック菓子市場でのシェアの拡大だ。ハーシーのミシェル・バックCEOは今回の買収について、「スキニーポップ」に加え、アンプリファイが持つポテトチップスの「ティレル」やプロテインバーの「オートメガ」、トルティーヤチップスの「パキ」をはじめとする国際的なブランドが自社のポートフォリオに加わることで、より多くの消費者のニーズに応えることができるようになると述べている。
ハーシーはここ数年、チョコレート菓子のブルックサイドフーズやジャーキー類のクレイブ・プレミアム・フーズなど、複数のスナックメーカーを買収してきた。中でも今回のアンプリファイ買収は最大の規模となる。合併により実現するコスト削減やポートフォリオの最適化などを通じたシナジーの向こう2年間のランレートは、年間2000万ドル程度になると見込んでいる。
バックCEOはフォーブスの取材に対して11月、他社の買収と社内での商品開発の双方を通じて、自社をより幅広いスナック菓子市場の大手に成長させることが重要であるとの考えを明らかにしていた。
菓子市場では「塩」と「ヘルシー」が優勢
調査会社ニールセンが11月に発表した米国のスナック菓子市場に関する報告書によると、「健康的な」または「塩味系」のスナック類の強化を同時に図ることは、賢明な戦略だ。調査結果によれば、スナック菓子全体の売上高が増加する中で、特に大幅な増加が見られるのはNon-GMO(非遺伝子組換え)原料を使用した商品(過去5年間で売上高が18.2%増)のほか、人工着色料・調味料不使用(同16.2%増)、塩味系(今年9月末までの5年間の年平均成長率が3.2%)の商品だ。また、同国内での塩味系のスナックの売上高は、キャンディやチーズ、ナッツ類、その他の売上高を上回っている。
さらに、これらのデータはキャンベルスープがスナイダーズ・ランスの買収を決めた理由を説明するものにもなるだろう。プレッツエルの「ハノーバー」、ポップコーン「 ポップシークレット」なども手掛けるスナイダーの今年9月末までの通期の売上高は、22億ドルに上る。
キャンベルスープのデニス・モリソンCEOもまた、取り扱う商品の多様化が売上高の増加と株主価値の向上につながるとの考えだ。キャンベルスープのベイクドスナック類の2017年度の売上高は、およそ25億ドル。スナイダーの買収により、年間売上高はプロフォーマ(試算)ベースで46%の増加が見込まれている。
同社は過去にもペパリッジファームクッキーやアーノッツ、ビスケットのケルセンなどを買収してきた。2011年にモリソンCEOが就任して以降も、翌2012年には 野菜・果物ジュースのボルトハウス、さらに翌年には乳幼児向け食品のプラム・オーガニックスなど、多くの企業を傘下に収めてきた。
今後も米国のスナック菓子市場で「塩味」と「ヘルシー」が優勢を維持するのであれば、両社は単に「買収に飽くことのない意欲を持ち続ける老舗」というだけの存在にはとどまらないだろう。