12月5日、サンフランシスコで開催された500 Startups主催のカンファレンスで、ベンチャーキャピタルUpfront Venturesパートナーで著名ブロガーでもあるマーク・サスター氏は、こう指摘した。
ICOとはInitial Coin Offeringの略で、トークン=仮想通貨を発行して投資家から資金調達することだ。トークンを売る形であることからトークンセールとも呼ばれる。2017年春から吹き上がったICOは、11月までに234件実行され、総計37億ドル(約4200億円)、平均16百万ドルが調達されたという。いくつかは200億円を超えるほどの規模だった。
しかし、サスター氏は「早すぎるステージに、スタートアップが安易に大きな金を集め過ぎる。また、株式のような権利もなく、法制度も未整備で、ガバナンスが欠落(つまり発行体=スタートアップの勝手)している」と問題をあげる。さらに、「詐欺やそれまがいがみられ、長期的な信頼を目指す形になっていないため、今後は規制当局も黙ってはいない」と、これから悪しき結果や失望が多発して、揺り戻しが来ると指摘する。
人それぞれに意見は異なるが、シリコンバレーで筆者が信頼している人々は、総じて慎重な姿勢だ。だが、無視できない現象であり、新たな時代にICOと共存する術も考える必要がある。
やはり、ICOはヤバいのか?
仮想通貨において、ICOへの投資は、ならすと10倍以上になっている計算になるという。ビットコイン相場が上昇を続けているのも追い風だ。自国の投資家が中心となるベンチャーの株による資金調達と異なり、世界からマネーが集まっている。
したがって、ICOは投機の色が濃い。1000万ドルを超えるICOは、大半が仮想通貨かフィンテック関係で、事業の実現というよりはトークンのためのトークンセールの様相を呈している。オンラインメディア「Token Report」が調べた226件のICOのうち、20件しかトークンを自らのネットワーク上で動かしておらず、他は純粋に投機の道具となっているという。
現実を見ると、2016年に起こったブロックチェーンのプロジェクトは、すでに9割以上が店じまいしている。これだけ確率が低い中で、実体あるものをつくる前段階でのICOがほとんどだ。つまり、とても確率が低いスタートアップに、シード段階での株式での調達水準をはるかに超える金がICOに投じられていることになる。
また、大型ICOのいくつかは詐欺の疑いで調べが始まっていると言われ、ICOのトークンも証券として規制すべしといった論調もある。そもそも、株は投資家の発言権など権利が認められ、会社の経営について牽制が効く形があるが、トークンを買ってもそうはならない。ホワイトペーパーに書かれたことを順守させる法律もない。
このように、論理的に紐解いていくと、ICOはかなりヤバいものだと思わざるを得ない。これがいまの実態であり、シリコンバレーでの多くの見方だ。