サイズとしては、ヴェラールはレンジローバー・イヴォークとレンジローバー・スポーツのちょうど中間。ロサンジェルス近郊で試乗したけど、実物は写真でみるよりずっとかっこいい。デザイナー、ジェリー・マクガヴァンのミニマリスト的なアプローチが冴えていて、新鮮で、清浄なスッキリとまとまった外観は、ますます拡大する高級SUVというセグメントに、大きな波を起こしている。表面がスムーズで、ボディが穏やかな角度で構成されているので、ヴェラールには落ち着いた雰囲気が漂っている。それでいながら、デザインはウルトラ・モダンだ。
レンジローバーのモデルを生産するランドローバー社(以下LR)は、この新しいデザイン言語を「リダクショニズム」、還元主義と呼んでいる。そして、その意味は車内に乗ってみると、すーっと腑に落ちる。横長のダッシュボードはシンプルでスタイリッシュ。LR社の新しいインフォテイメント・システム、タッチ・プロ・デュオを採用していて、高画質なグラフィックと機能性は共に、このセグメントでも真剣に先を行っていて感心させられる。2つある、10インチのタッチスクリーンは、美しくかつ賢い 。OFFの時、スクリーンはブラックでミニマリストらしい雰囲気だが、ONになると、パネルは生き返ったように解像度の高いディスプレーに、鮮明な映像を映し出す。
クリーム色の柔らかいレザーのシートに掛け、高級な素材に囲まれたミニマリスト的で、さりげない色気のある室内にいると、心が静まると同時に華やいで浮き立ってくる。そう、陰陽のバランスがとれた瞬間がやってくる気さえする。たとえるなら、禅の精神を理解した英国の貴族のようだ。
ボディのヒップラインが高く、シートが低く、ドライバーを第一に考えられているヴェラールは、これまでのどのレンジローバーよりも座位が低い。だから、これまでの見晴らしがいいポジションに慣れているドライバーは、眼の高さに差があって最初は奇異に感じられるかもしれない。そして、もしドライバーが僕のように188cm以上の身長の場合、後部席のスペースはちょっと狭く感じられて、特にヘッドルームが窮屈かもしれない。
ヴェラールのエンジンは2.0Lのディーゼルと3.0L V6が用意されている。でも、やっぱり試乗するなら、フラッグシップの「ファースト・エディション」380馬力を発揮する3.0L V6スーパーチャージに乗るしかない。8速オートマティックとの組み合わせで、このヴェラールは妥協を一切許さない走りを見せる。でも、丁寧に乗ろうと思えば、キャビンは他のどのレンジローバーのモデルよりも高い静粛性と、贅沢感、そして快適な乗り心地を供してくれる。
ステアリングもちょうどいい手応えで、車両の重さを感じさせない設定に驚く。今までのレンジローバーが好きな人なら、この最新ヴェラールのルックスや走りはたまらないだろう。