「英語の授業で必須の国勢調査があり、人種欄では白人、黒人、ヒスパニック系、アジア系のいずれかのチェックボックスに印をつける必要があった。くるくるの髪にそばかすだらけの顔、白い肌を持ち、人種の入り混じった私はこの欄を見て、間違えたくはないものの、どうすれば良いか分からなかった。一つしか選べないけど、そうすると両親のどちらかを、自分の2つの部分のうちの片方だけを選ぶことになる」
「先生からは、白人の欄に印をつけるよう言われた。『あなたは白人に見えるから』と。私はペンを置いた。反発したわけではなく、どうしていいか分からなかったから。私の選択を知った母が、腹にぽっかりと穴が空いたような悲しみを感じる姿を想像すると、そんなことはできなかった。私はその欄に記入しなかった」
「その夜帰宅し、父にその出来事を話した。父が発した言葉は、今でも心に焼き付いている。『次に同じことがあれば、自分のボックスを作りなさい』」
父親からのこの身にしみる教えは、彼女の人生に影響を与えてきた。彼女が得た教訓は、周りに順応するよりも、個性が大事であるということ。規則や期待を破ったとしても、個性を守るためにできることは大胆に実行すべきだということだ。
このアドバイスの価値は、人種的アイデンティティーの問題にとどまらない。標準化や均質化は産業プロセスや各国間の商業インフラには有用だが、人間に対してはそうはいかない。逆境への対処法にせよ、キャリアの管理法にせよ、自分らしくあることは、他人の期待に応えることよりも大切だ。たとえ、その期待自体が悪いものでなかったとしてもだ。
ここでは、他人が期待するボックスを選ぶのではなく、自分のボックスを書くとはどういうことかを示す例を挙げる。