ところでSTIは、モータースポーツの参戦や高性能パーツを開発する子会社だ。幸いなことに先月、北海道にあるスバルの美深テストコースで、この車を試乗する機会があった。
BRZ STIスポーツのボディの中身は、 通常のBRZにプロテインを飲ませたかのように見える。この日はずっとほっぺたが緩みっぱなしだったけれど、まず最初に笑みが湧きあがったのは、少しドレスアップされてさりげなく成熟したエアロパーツと、黒のホイースに鮮やかな赤い4ポッド・ブレンボー・ブレーキを見つけた時だった。
ブレーキとホイールに加えて、BRZ STIスポーツにはリップ・スポイラー、リア・ディフューザー、STIの特別なロゴ、そして控えめなリア・ウィングがつけられている。そして室内も、黒と赤のトリムにSTIブランド特注のスポーツシートとメータ類が配されている。どれも派手さはないものの、このモデルがどんな走りをするのか想像できるように、戦略的なアップグレードが施されているのだ。
でも、パワーの増強を期待してはいけない。それは、このモデルの目指すところではない。STIは、BRZのパワーもトルクも充分だと考えているので、207ps、トルク212Nmのままだ。
むしろ、このクーペの本領は、ハンドリングと運転のスリル度を強化することなのだ。事実、パワーはそのままで、STIはサスペンションとシャシー剛性を向上させることで、 このモデルをBRZの最大のポテンシャルに近づけることに成功した。
では、実際はどんな走りなのか、って? スピーカーの音量にたとえてみよう。
現行のBRZがボリューム目盛りの7だとしたら、STIスポーツは目盛りが9だと言える。とにかく走りは安定している。STIスポーツに用いられたダンパーなどは、ザックスの特製。剛性強化のためのフレキシブルVバー、18インチのタイヤ、そして、うれしいのでもう一度言うけれど、4ポット・ブレンボー・ブレーキ。こんなドレスアップを見れば、もう微笑みどころか、ニンマリしてしまう。
運転席に滑り込むと、よりスポーティになっているダッシュボードとシートのおかげで、気分はますます上がる。STIスポーツに用意されているのは、6速マニュアルかATだけど、今回僕はマニュアルを試乗することができた。これもラッキーで、ハミングが漏れそうだ。
5000回転まで回し、1速でスタートするとその感覚は高い期待をゆうに超える感触で、もう破顔一笑! 変速していくと加速が速やかで、気がつくと高速コーナーを時速160キロで走っていた。