中国物流大手アリババが仕掛けた今年のセールは、流通総額が253億ドル(2兆8700億円)と過去最高額を記録。公式発表やサウスチャイナモーニングポストなどメディア報道によると、同日の取引件数は14億8000万件(前年比40%)、1秒あたりの最高取引量は25万6000件(前年比2.1倍)に達したという。配送・発送された商品数は、なんと8億1200万件だ。
そんな膨大過ぎる取引・配送タスクを処理するために、アリババが舞台裏で積極的に採用を進めてきたテクノロジーがある。人工知能(AI)とロボットである。
まず注文段階においては、AIが顧客の相談に応えつつ商品を推薦。購入をサポートしながら並行して在庫管理を担当した。例えば、アリババの顧客相談用AIチャットボット「Alixiaomi」は、人間から投げかけられた質問の90%以上を理解し、1日あたり350万人に対応することができると言われている。
同社の在庫管理担当者によれば、「AIはすべての相談には対応できるわけではないが、問い合わせが急増した際には大活躍する。(中略)最新バージョンのAIは、顧客が相談過程に表した感情まで読むことができる」と説明されているが、今年の光棍節にはその威力を存分に発揮した。
デザインAI「Luban」も大活躍だった。Lubanは2016年の光棍節から使われ始め、1年間で商品広告用ポスター1億7000万枚を作成。クリック率を2倍に増やすことに寄与してきた。今年の独身の日セールには、1日4000万枚のポスターを生み出せるまでに性能がアップデートされたと、中国系各メディアによって報じられている。
一方、アリババの物流子会社「菜鳥網絡」が建設した深セン近郊の自動物流倉庫では、200台のロボットが24時間稼働。ロボット群が一日に処理できる注文量はおよそ100万件で、人間の手の3倍も効率がよいとの触れ込みだ。
今年の光棍節にはまた、アリババのクラウドサービス会社・アリクラウドが運営する「Apsara」にも注目が集まった。Apsaraは、アリババが独自に研究開発したスーパーコンピュータシステム。世界中に散らばった約100万台のサーバーを1台のスーパーコンピュータで連携・管理するものだが、今回の独身の日も、世界数百地域で発生した取引の演算を担当した。
なお華北3エリアにあるアリクラウドのデータセンターでは、巡回ロボット「Tianxun(天順)」が導入されている。こちらも既存の業務の30%を削減することに成功するなど、ECイベントの効率化・売上拡大に寄与している。
今後、ドローンの導入なども本格的に検討しているアリババ。独身の日の“SF化”はどこまで進むのか。世界最大のECイベントの“舞台裏”にも引き続き注目していきたい。