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2017.10.31 19:15

7回目の「アプリ甲子園」が人気を伸ばし続ける理由

今年で7回目の開催をむかえた「アプリ甲子園2017」

10代はいま、世界をどのように“実装”するのか——2017年10月15日、アプリ甲子園実行委員会(協力:株式会社D2C、ライフイズテック株式会社)主催のアプリ甲子園2017決勝大会が開催。10組のファイナリストがプレゼンを行い、優勝者を決定した。

アプリ甲子園は2011年以来毎年開催されている、全国の12〜18歳を対象にしたアプリ開発コンテスト。ForbesJAPANからは、副編集長の谷本有香が審査員として2016年より参加している。昨年大会ではNTV「スッキリ!」など多数の媒体掲載や、特別企業賞の電通アイソバー賞を受賞した「言い訳メーカー」のよしもと芸人とのコラボが実現。さらに本大会からは総務省の後援で総務大臣賞の提供もスタートと更なる盛り上がりを見せている。

一方で、審査員の「ファイナリストそれぞれが独立した価値を持っていた」という総評が示すように、優勝者を決定する審査は予定時間を大幅にオーバーするほどに難航。そんな大会の様子に迫った。

女性ならではのアプリが多数

品川女子学院高等部2年の西林咲音

一昔前まで「理系男子」のイメージが強かったプログラミングだが、それは昔の話。(株)D2Cの広報である田村麻里子によれば、近年では優秀な女性プログラマーが多数決勝に進出しているという。

例えば、本人の体験が色濃く表れたアプリ「Calm」をプレゼンした西林咲音(品川女子学院高等部2年)もその一人。持病で学校を休んだ際の不安な気持ちが忘れられない西林は、心理的負担の原因を「現状が把握できないこと」だと考え、学校や勤め先への出欠状況や体調を記録するアプリを開発した。UIデザインには心理的負担を和らげるカドマルを採用し、あくまで「不安をなくす」ことを徹底した仕上がりになっている。


早稲田実業学校初等部5年の菅野晄

審査員に「今回のファイナリストの中で一番ぶっ飛んでいる」と言わしめたのは菅野晄(早稲田実業学校初等部5年)。彼女が開発した「回一首」は、日本の伝統文化である百人一首を大胆に取り入れたアクションゲームだ。内容は画面外から飛んでくる句を避けるという、百人一首の知識がなくても楽しめるもの。菅野はコーディングだけでなく、飛んでくる文字の執筆から句の読み上げから英語版のデザインまで手がけている。完成度の高さから特別に参加を許可された菅野は、わずか10歳。早熟すぎるマルチプレイヤーに、今後の期待は高まるばかりだ。


日本女子大学附属高等学校2年の藤田麻里

「メガネキャラが好きでたまらないんです!」と情熱に満ちたプレゼンを披露したのは、藤田麻里(日本女子大学附属高等学校2年)。彼女が自分のような人のために作ったという「SHINDo」は、推しキャラ(自分の好きなキャラクター)が作業を応援してくれるサブカルクリエイター向け作業進捗管理ツールだ。使い込むほどキャラとの絆が深まり、ボイスのバリエーションも増加など、タスクをこなすのが楽しくなるよう設計されている。

素朴な思いをテクノロジーで解決する

三田国際学園高等学校1年の山口響也

女性陣が趣味や情熱を前面に押し出したプレゼンを披露する一方で、男性陣は普段の悩みに対してテクノロジーでアプローチするものが多かった。

「スマホ内の恥ずかしい写真を隠したい……」

そんなちょっと後ろめたい欲望にフォーカスしたのは、山口響也(三田国際学園高等学校1年)。「Photo Disguiser」はその名の通り、スマホライブラリ内の写真に他の画像を重ねることで、見られたくない写真を「偽装」できる。人には言いづらいが誰もが一度は抱いたことのあるニーズを捉えた機能には、審査員をはじめとする大人からの注目が集まった。


横浜国立大学教育学部附属横浜中学校2年の内山史也

技術面での評価が高かったのは、内山史也(横浜国立大学教育学部附属横浜中学校2年)。洗濯物の取り込み忘れを防ぐ「Drying Assistant」は、ハンガーに取り付けたセンサーが乾燥時間を計測してくれるIoTデバイスだ。センサーの取り付けは、家族に教えてもらいながら自力で半田付けしたのだとか。各家庭の膨大な情報を扱うため、ビッグデータ時代のサービスとしても期待が集まる。

プログラミング開始から1年半で優勝。「SNSは遊んだ後の報告ばかり」

慶應義塾湘南藤沢高等部3年の西村佳之(左)と審査員長の齋藤精一(右)

どのファイナリストも他にない魅力を持つ中、優勝を果たしたのは西村佳之(慶應義塾湘南藤沢高等部3年)。スケジュール共有機能で暇な日の遊び相手を見つけることができる「Nekt」は、日常に即したアイデアと技術力の高さが評価を集めた。特に技術力については、審査員に「ベンチャー企業並みの完成度」と言わしめるほど。

「InstagramやFacebookなどのSNSは『遊んだ後』の報告ばかりが盛んで、『遊ぶ前』にあまりフォーカスしてないのが不満だった」と制作の動機を語った西村。しかし、実は彼はプログラミングを始めてまだ1年半程度。半年前にコンセプトを決めてからは、ひたすら試行錯誤を繰り返す日々だったという。

短期間でひたすら精度を高める日々は大変に思えるが、西村は「単純にプログラミングが好きだから」とシンプルに語る。技術賞と優勝・総務大臣賞の同時受賞については「全く実感が湧かない」とコメントしたが、今後は起業も視野に入れて活動していくつもりだという。

「レベルは向上しているが、日常を良くしたい気持ちは変わらない」

D2C社長の宝珠山卓志

今回で7回目になるアプリ甲子園。2020年のプログラミング教育必修化など、今でこそその重要性は誰もが知るところだが、7年前といえばまだスマホが浸透したばかり。そんな時期にD2C社長の宝珠山卓志はプログラミングの需要が増すのは自明だと考え、アプリ甲子園の開催に踏み切った。7回の開催を通して、大会に変化はあったのか。

「アイデア、イラスト、プログラミング、プレゼンなど、いずれも参加者のレベルも年を経るごとに向上していますね。一方、ずっと変わっていないのは、日常生活の中にある『ちょっとしたこと』をプログラミングで解決しようとする『ピュアな心』ですね」

今回の大会でもIoTなど先端技術を取り入れながらも、学生たちはあくまで日々を過ごす中での素朴な感情を起点にアプリを開発している。そんな本大会の意義を、田村は次のように語った。

「大学生ならインターンで企業の現場を体験できますが、中高生にはそれがありません。けれど、多感な時期にこうした経験を積めば、きっとその後の人生にも大きく影響するはずです。例えば、スポンサー企業に出してもらっている特別企業賞の受賞者は、企業の方々からのアドバイスを受けたり、実際の会議さながらの打合せを体験したりできます。本大会を始めとしていろんな経験を積んで、世界に羽ばたいてくれれば嬉しいですね」

今年もファイナリストそれぞれが独自の「世界」を実装してみせたアプリ甲子園。次世代のスタンダードが、ここから生まれるのかもしれない。

アプリ甲子園2017の受賞者は以下の通りだ。

優勝・総務大臣賞:「Nekt」 西村 佳之 慶應義塾湘南藤沢高等部
準優勝:「Photo Disguiser」 山口 響也 三田国際学園高等学校
第三位:「Drying Assistant」 内山 史也 横浜国立大学教育学部附属横浜中学校
技術賞:「Nekt」 西村 佳之 慶應義塾湘南藤沢高等部
セガゲームス賞:「SHINDo」 藤田 麻里 日本女子大学附属高等学校
電通アイソバー賞:「Drying Assistant」 内山 史也 横浜国立大学教育学部附属横浜中学校
パワーハウス賞:「SHINDo」 藤田 麻里 日本女子大学附属高等学校
ゆめみ賞:「メモリーカプセル」 藤本 結衣 東京都立両国高等学校

Promoted by 株式会社D2C 文=野口直希 写真=小田駿一

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