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2017.10.28

米「大学発ベンチャー」を支える学生投資家集団、100名の夢

fizkes / shutterstock.com

2016年の秋、エリック・タークジンスキーは全米の55の大学を訪れる旅に出た。大学建物内のソファや、レンタカーの中で寝泊まりしながら続けたその旅の目的は、各キャンパスで最も豊富な起業家人脈を持つ学生と会うこと。そして彼らを自身が始める新しいタイプのベンチャーキャピタルに引き入れることだった。

今年9月18日にファンド設立を発表した「Contrary Capital」は、タークジンスキーの各地での出会いが結実したものだ。SoFiやテスラ、Twitchなどの共同創業者が役員や出資者を務める同社には、カリフォルニア工科大学、シカゴ大学、ハーバード大学、ジョンズホプキンズ大学、ライス大学をはじめとする55の大学の学生計100人が投資家として名を連ねる。

Contrary Capitalの投資対象は、大学に関連するスタートアップだ。1件あたりの出資額は5万ドル(約570万円)〜20万ドル(約2300万円)。

Contrary Capitalでは、あるスタートアップへの投資を検討する際、その分野の専門知識を持った全国の30〜40名の投資家からなる委員会が設けられ、タークジンスキーが最終決定を下す。投資プランの売り込みに成功したチームには金銭的なインセンティブが与えられる。タークジンスキーは毎年15〜25件を採用する予定だという。

近年、ブームとなっている大学系VCだが、その多くがマサチューセッツ工科大学の「The Engine」やカリフォルニア大学バークレー校の「The House Fund」のように地元の大学関係者によるスタートアップを投資の対象としているのに対し、Contrary Capitalは全米にネットワークを持っているのが特色だ。

また、投資先にリターンを要求する点においては、「Rough Draft Ventures」や「Dorm Room Fund」といった大手VC傘下にある学生主導型のVCとも異なる。

「私はこの6、7年間の人生を、学生スタートアップ関連の業務に費やしてきました。シリーズA以降の投資に関しては特に目利きであるとは言えませんが、それより前の大学でゼロからスタートアップを立ち上げる段階については把握している絶対的な確信があります」と、タークジンスキーは話す。
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編集=海田恭子

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